幻影師アイゼンハイム


2008.6.5 すべては最後のマジックのために 【幻影師アイゼンハイム】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
マジックものとしてすぐに思い出したのはプレステージだ。ただ、本作とは決定的に違うのは、プレステージは良くわからないなりにも、タネを説明しようとしたのだが、本作はまったくそれを最初から放棄している。最初からマジックのタネを説明する気がない。だから、とんでもないマジックをやってのけてしまう。この世紀のマジシャンであるアイゼンハイムが突拍子もないマジックをするということが前提となって、本作は成り立っている。タネを事細かに説明してしまうと作品自体が崩壊してしまうからだろう。結局は、この作品は最後の壮大なマジックのための伏線だったに過ぎない。アイゼンハイムは素晴らしいマジシャンだ。そして、皇太子は悪いやつだ。それら全てのすりこみがあってこそ、最後のマジックが活きてくる。まんまと騙されてしまった。

■ストーリー

魅惑的なイリュージョンで、大衆の心をつかむ幻影師アイゼンハイム(エドワード・ノートン)。ある日、彼の評判を聞きつけた皇太子レオポルド(ルーファス・シーウェル)が、婚約者のソフィ(ジェシカ・ビール)を連れて彼のショーを観覧。しかし、アイゼンハイムとソフィの間には、幼い日に身分の違いが原因で引き裂かれた過去があった。

■感想
アイゼンハイムのマジックが突拍子もないというのが一番のインパクトなのだが、それ以外にも見所はある。マジックのタネを知りたがる権力者であったり、アイゼンハイムの人気を利用しようとする者だったり。このアイゼンハイムというキャラクターが飄々としながらも、決して権力者に媚びることなく、自分の信念を貫く様がすばらしい。幼馴染との衝撃の出会いから、葛藤があり、そして決断する。本来のキャラクターとしては冷酷なイメージをもたせるはずなのだが、エドワード・ノートンの表情がそれらをうまく緩和している。この何を考えているかわからない表情が非常に良かった。

マジックのタネをほぼ明かさずに最後まで流れる本作。Mrマリックが登場したときは、絶対にできるはずがないと思いながらもすべてがマジックだった。そう考えると、本作のアイゼンハイムのマジックも、もしかしたら本当に可能なのかもしれない。本作では、観衆と同じように疑問をもってくれる狂言回し役が登場する。この警部が権力に媚びる嫌なやつではなく、アイゼンハイムの人格を尊重し、マジックに興味がありながらも、タネを聞くことがルール違反だということもしっかりとわかっている。このキャラがあってこそ、成り立つ作品なのかもしれない。

ラストに至る壮大なマジック。後付の感はあるが、結末を見るとやはり驚かされてしまう。何かあるなというのはわかっていたが、まさか、この着地点だとは思わなかった。本作のすべては、最後のマジックを成功させるためだけにあるのかもしれない。巧みにイメージを植え付け、結末まで目を釘付けにする。良く考えれば、罪のない人に罪を押し付けているのだが、それらは一切語られてはいない。やってることはとんでもないのだが、それすらも凌駕するほどの結末だ。

本作はラストのマジックに全てがかかっている。ここに素直に驚くことができなければ、本作を楽しむことはできないだろう。




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