プレステージ


2007.6.27 計算されつくした伏線 【プレステージ】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
Mrマリックのようなマジックというよりも引田天攻のイリュージョンなのだろう。最初に事件が発生し、そこに至るまでの過程を過去から現在へ順に描いていく。本作にはまさにこの手法がぴったりだった。最初はジュリアの死が二人の確執の原因だったが、それが次第にイリュージョンのタネをめぐる争いに発展し、最後は壮絶な展開となる。多少、非科学的な部分もあるが許容範囲内だ。丁寧な伏線をあちこちにばら撒き、最後にアッと驚かせる。しかし、丁寧な伏線が仇となり、結末がある程度想像できてしまった。もちろん結末を予測していても十分楽しめる作品ではある。

■ストーリー

19世紀末のロンドン。若き奇術師アンジャーとボーデンは、中堅どころの奇術師ミルトンの元で修行をしていた。しかしある日、アンジャーの妻で助手のジュリアが水中脱出に失敗し死亡。事故の原因はボーデンの結んだロープが外れなかったことだった。これを機にアンジャーは復讐鬼へと変貌し、2人は血を流す争いを繰り返すことになる。その後、結婚し幸せな日々を送るボーデンは、新しいマジック「瞬間移動」を披露するのだが…。

■感想
奇術師の命ともいえるタネ。それは現在でも変わらないのだろうが、命を懸けてでも守りきらなければならないタネがあり、ライバルのトリックを暴くことに心血を注ぐ場合もある。単純なライバル関係が、奇術師ともなるとまた一風変わった関係になるのが面白い。相手の秘密を暴くためにスパイを送り込む。これはまさしく企業間の争いにも繋がる部分なのだろう。

過去から現在へ、そして合間には事件の謎解きも加わってくる。しっかりと内容を把握していないとおいていかれる危険性もあるが、この複雑さをのり越えれば、たくみに張り巡らされた伏線の数々を存分に楽しむことができる。
無駄なことは一切ないように、序盤から終盤にかけてのちょっとした会話や手品なまでもが最後のイリュージョンに繋がっている。おそらくすべてが計算されつくしているのだろう。非科学的な部分も含めてミステリアスな雰囲気もあれば、やけに原始的でアナログ的なトリックもある。そのバランスがすばらしいのだろう。

最終的には結末間近でなんとなくオチが想像できた。綿密な伏線のため、それらを総合して判断すると自然に答えが導き出されてしまう。しかし、わかっていながらも最後はどうなるのかというワクワク感がなくなることはない。逆に伏線どおりにしっかりとしたオチが示されれば、それはそれですっきりとした印象をもって見終わることができるだろう。

通常のマジックすらある程度の犠牲の上になりたっているということが、もしかしたら一番の衝撃かもしれない。



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