2007.10.3 少年漫画の王道的展開 【餓狼伝 The Bound Volume 1】
■ヒトコト感想
まるで少年ジャンプのような展開だ。小説を読んでこれほど漫画的だと思った作品はない。悪い意味ではなく、良い意味でとても少年ジャンプ的であり、男があこがれるバトル系マンガだ。最強と思わしき人物が次々と登場し、いったい誰が最強なのか?
その答えをワクワクしながら読み進めていく。対決が始まろうとすると、とたんに邪魔が入り、対決は流れ、読者の期待を引っ張り続ける。すべての面で漫画的な引きの強さをもっている作品だ。そして、男なら誰でも憧れる、史上最強の男の称号を争う本作はまさに目が離せない作品かもしれない。
■ストーリー
プロレスラー・梶原年男に完膚なきまでに叩きのめされてから6年…丹羽文七は竹宮流・泉宗一郎に命をかけた野試合で勝利した。誰が一番強いのか、ただそれを決めたい!
「血わき肉おどる」直接的で肉体的な感動を与える、キング・オブ・格闘小説。既刊「餓狼伝 1~3」「餓狼伝・秘篇 青狼の拳」に加筆、訂正して合本したもの。
■感想
本作の厚さは京極夏彦を彷彿とさせる。しかし、その厚さを感じさせないほど熱中して読んでしまった。本の重量で手首が痛くなるのも気にならないほど、集中し、ページをめくる手を止めることができなかった。主人公である丹羽の強さ、そして、その丹羽を超えるような強さをもつその他の登場人物たち。主人公が圧倒的な強さというわけではなく、戦いに敗れ、修行し、だんだんと強くなり、宿命のライバルと対決する。これはまさに少年漫画の王道ともいえる展開だろう。
丹羽だけでなく、魅力的な登場人物が多数存在する。特に藤巻や堤など物語の半ばから登場したライバル的存在には心惹かれてしまう。最初から圧倒的強さを持った人物として登場する松尾象山や姫川と比べると突然登場した分、ミステリアス感と、強さがどのランクなのかというのが気になってしかたがなかった。様々な強敵が登場すると、どうしてもそのランキングをつけたくなるのだが、本作のように突然現れる強敵というのが、作品のテンションをもう一段階高いものにしている。
登場する丹羽のライバルたちそれぞれには結構なページを割いて、そのキャラクター付けを行っている。強いと思われたキャラクターがあっさり倒されることで、さらに強いという印象をもたせる方式も使っている。地上最強の格闘技はいったいなんなのかということが論争されていた時代に書かれた本作。現在のように総合格闘技というカテゴリーがない時代のことなので、空手全盛というのもわかりやすくてよい。恐らく今ならば、違った格闘技が台頭してくることだろう。
すでにマンガ化されている本作。当然漫画も面白い。残り三巻ほどあるが、厚さをまったく気にすることなく、読み続けるだろう。
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