ガンジス河でバタフライ 


2007.9.16 旅の楽しさと人との出逢い 【ガンジス河でバタフライ】

                     

■ヒトコト感想

旅モノといえばすぐに深夜特急を思い出してしまう。そして、訪れる場所も同じであればどうしても比較してしまう。深夜特急がストイックな旅だとすると、本作は楽しむための旅という感じだろうか。旅人が男と女の違いがあるにせよ、旅に対するスタンスが随分と違うように思えた。深夜特急は節約の旅だったが、本作は最低限の節約はするが無理はしないというような感じだ。単純な比較はできないが、男のロマンを感じるのは深夜特急で、純粋に旅の楽しさと人との出会いの大切さを心に訴えかけてくるのは断然本作のほうだ。

■ストーリー

20歳にして、長年夢見ていたひとり旅に出た、てるこ。極端な小心者だからこそ、五感をフルに稼動させて、現地の人とグッと仲良くなっていく。インドでは聖なる河ガンジスを夢中で泳ぎ、ぶつかってしまった人に謝ると、なんと流れてゆく死体だった。ハチャメチャな行動力と瑞々しい感性が大反響を呼んだ、爆笑紀行エッセイ第一弾。

■感想
若い女が一人で異国の地を旅する。そして、そこで出会った人々との交流を描く。これだけ書くと、なんだかずいぶんとさわやかでスッキリとした、まるで世界の車窓からを彷彿とさせるような印象をもつかもしれない。実際にはそれとは真反対で、貧乏旅行的な様相を含んでいる。若い女といえども、どちらかと言えばお笑い系である作者がなんでもありで、自分の思うがままに行動する。読んでいると、この行動力のすばらしさには圧倒される。

旅モノとして有名なのは深夜特急があるのだが、それとはまた趣が異なっている。同じように香港やインドを訪れているはずなのに、旅人が違えば、こうも違った印象を与えるものかと驚く部分でもある。作中には女だということを感じさせる部分はほとんどない。ただ、一人の旅人として旅を楽しんでいるようだ。

何か大きな目的があるわけでもなく、いつまでいるという予定もない。ただしのんびりとすごすわけではなく、その国での生活を思いっきり満喫している。生活習慣の違いから戸惑う部分も多々あるはずなのに、それら負の部分はほとんど描かれていない。ただ、自分の欲望のおもむくままに思うがまま行動しているのが、読んでいて心地よくそして、女というある種、旅をする上では不利な部分を感じさせないキャラクター。この作者だからこそできたことだろう。

単純な比較はできないが、深夜特急ほど硬派でストイックではない、軽い感じの作品だ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp