イースタン・プロミス


2008.7.20 隠すことない残虐描写 【イースタン・プロミス】 HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
マフィアモノ。それも組織と家族を大事にしつつ、邪魔者には容赦ない。どことなくゴッドファーザーに近い雰囲気を感じる本作。マフィアのドンであるレストランのオーナーと、親に頭があがらない、バカ息子。そして、息子の運転手であるニコライ。メインはこの三人とアンナなのだが、恐ろしいまでの絆の強さを感じたかと思うと、手のひらを返したような裏切りもある。一人の少女の日記が様々な出来事を引き起こす。ニコライの忠実な犬ぶりもそうだが、何よりバカ息子が一番インパクトがある。自尊心が強く、他人に対しては強く当たる。かと思えば、父親には頭があがらない。父親は表の顔はどこにでもいる子供好きのオーナーだが、裏の顔は残酷なことこのうえない。典型的なマフィアものだが、ニコライの存在自体がものすごく心に残っている。

■ストーリー

病院で働くアンナの下に、一人の少女が運び込まれる。意識を失くした少女は、女の子を産み落とし、息を引き取る。バッグに入っていた手帳にはロシア語で日記らしいものが書かれており、少女がロシア人であることが分かる。手術に立ち会ったアンナは、少女の身元を確認するため、ロシア料理レストランのオーナーに相談すると、自分が日記の翻訳をしようと申し出る。しかし、その後、謎のロシア人、ニコライがアンナに近付き始め…。

■感想
一人の少女の日記をきっかけにマフィアと関わることになるアンナ。ロシアマフィアというちょっとなじみのない部分があるのだが、永遠に続くと思われる殺し合いの螺旋はマフィアものにありがちな流れのなか、ロシアマフィアの圧倒的な残虐さが際立っている。この残酷な描写を余すことなく表現しているのは、本作の監督と主演のコンビとなるヒストリー・オブ・バイオレンスと同じような香りを感じることができる。残虐な描写をそのまま直接的に表現したかと思えば、表ではレストランのオーナーが老人たちをもてなしている。この光と影の対比。自分たちのファミリーを第一に考えるあたり、まさにゴッドファーザーを彷彿とさせる作品だ。

バカ息子であるキリク。そしてキリクの運転手であるニコライ。キリクのはじけっぷりがとても印象的だが、それはニコライの物静かなたたずまいと、冷静沈着でそれでいて高い能力を持っているとアピールするのに十分な流れだ。キリクとニコライの関係と共に、本作の鍵を握るのはアンナとニコライとの関係だ。少女が産み落とした子供をめぐり、見えない部分で暗躍するニコライ。ニコライのキャラクターがやさしさを持ち合わせていながらも、暴力をもいとわない迫力を隠し持ったその表情にはしびれるものがある。

余計なラブストーリーもなく、純粋にマフィアの動きを追っていく本作。ファミリーとファミリーを脅かす外圧。少女の忘れ形見である赤ん坊を守るアンナ。ニコライの立ち居地が正直、結末間近まではよくわからなかった。それは、ニコライにはある秘密があったからだ。この秘密がわかったあとは、ニコライに対する見方が一気に変わってきた。ファミリーに忠誠を誓いながらも、どこかやさしさのようなものを持ち合わせているニコライ。アンナとの関係も付かず離れずで、それが逆に良かった。

激しい暴力描写とロシアマフィアの雰囲気。ゴッドファーザーに通じるものがあるので、その手の作品が好きな人にはお勧めかもしれない。



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