ヒストリー・オブ・バイオレンス


2007.9.25 アメリカならではの作品 【ヒストリー・オブ・バイオレンス】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
アメリカならではの作品だろう。暴力が身近に感じられる国でなければ、この作品はただのマンガでしかない。人の心の奥底に巣くう暴力の衝動を呼び覚ますように、基本的には殺されるべくして殺される人々なのだろう。善対悪という図式から、いつの間にか善と悪が入れ替わったような流れとなっている。単なるバイオレンスアクションかと思いきや、物語はミステリーの様相を見せはじめる。トムの過去が明らかになるにつれて、その息子さえも危険な香りを漂わせている。暴力の連鎖は決して止まらない、そんな悲しい雰囲気を感じた。

■ストーリー

ダイナーを営むトムは、店の客に銃で脅されるが、相手の隙をついて銃を奪い、殺してしまう。正当防衛で町のヒーローになったトムだが、彼の過去を知っているという謎の男が現れ…。妻と2人の子どもと幸せに暮らしていたトムの過去が、ゆっくり明らかになっていく。

■感想
もしかしたらものすごい単純な映画なのかもしれないが、最初に感じた印象は家族を守る正義の男という印象だった。しかし、それがしだいに変化していき、トムという男の過去にまでさかのぼることになる。喩え正義のヒーローではなくとも、完全な悪人を倒す姿を見るとすっきりする。ただ、その背景を考えると、人の狂気の恐ろしさを感じずにはいられない。単純にキレるとも違う、確信犯的に相手を完膚なきまでに叩き潰す。その手際の良さは本作の見所の一つだろうか。

トムと共にもう一つポイントとなっているのは息子の存在だ。いじめられっ子的な息子が、ある日、ブチキレて同級生をぶちのめす。トムの血が繋がっていると思わせる場面でもある。人間誰しもキレるというのはあるだろう、しかし、本作のキレ方はある種異常だと思った。だからこそ、作品として成り立つのかもしれない。

激しい暴力描写と共に、肉欲も隠すことなく表現している。そう考えると、本作は自分の欲望の赴くままに行動するということが隠れたテーマなのだろうか。階段の踊り場でセックスをし、訪れたマフィアを殴り殺す。人間ここまで原始的になれるかというほど、本能に忠実な行動なのかもしれない。しかし、トム自身のビジュアルは、まさに子ども思いの良いパパだけに、その
ギャップが強烈なのかもしれない。

まさにアメリカならではの作品だろう。



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