どきどきフェノメノン 


2008.4.3 理系的などきどき感 【どきどきフェノメノン】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
森博嗣が恋愛ものに挑戦。しかし、中身はいつもとほとんど変わらない。多少の恋愛風味はあるのだが、結局は今までのシリーズとなんら変わることはない。それは恐らく、登場人物たちが大学院生もしくはそれに関わる人々ということが大きいのだろう。論理的思考で恋愛のどきどき感を分析する。知的な会話と知的な思考原理。どんなに恋愛の駆け引きを表現しようとも、そこには理系的なにおいがぷんぷんと漂ってくる。過去のシリーズ作品の中には本作と同程度の恋愛作品もあった。そう考えると、単純な恋愛として描こうとするには、インパクトがたりないように思えた。いつもの森作品が好きな人にとってはまったく心配することのない作品なのだが…。

■ストーリー

窪居佳那・二十四歳・大学院のドクタコースに在籍中。趣味は「どきどき」の探求、悩みは飲酒時の記憶喪失。講座の後輩の爽やか好青年・鷹野史哉、同じく後輩で人形オタクの水谷浩樹、指導教官の相沢助教授、謎の怪僧・武蔵坊―佳那を一番どきどきさせるのは誰か?

■感想
主人公は窪居佳那という大学院生。すでにこの設定がいつもの森作品をイメージさせる。理系であり大学院生である時点で、申し訳ないがある程度ビジュアル的なイメージを作ってしまう。そして、そんな佳那がどんな恋愛をするのか。よくある恋愛ものではないのは確かだ。どきどき感を楽しむというシチュエーションもそれほど共感はできない。理系的な思考回路と恋愛というのは、一番かけ離れていると思うのだが、それすら強引に融合させている。

佳那の相手となる人物たちには、もちろん大学院生はいるとして、そこにわけのわからない坊主がいるのはなんなのだろうか。これが絶対に必要だとは思わないし、重大な意味もなかった。他の大学院生との絡みであっても、いったい佳那は誰が好きなのかはっきりしないという印象しかなかった。佳那の行動に煮え切らなさを感じて、やきもきするというのではなく、ただ単純に理系的な損得でどきどき感を楽しんでいるようにすら感じてしまった。

本作をよくある恋愛小説として読むとしたらそれは間違いだ。ただ、森博嗣ファンであれば読んで間違いはない。というよりも、いつもの森博嗣作品以外の何ものでもない。理系な雰囲気を存分に味わいながら大学院生の生活というものを想像し、論理的に考え、どきどきする相手を選択する。理系的な恋愛小説というのは新しいのかもしれないが、一般受けするかどうかはわからない。

一般人にはかなりハードルが高いのかもしれないが、森作品ファンならばきっと楽しめるだろう。



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