2006.4.29 納得できるか微妙な結末 【ダ・ヴィンチ・コード 下】
■ヒトコト感想
長い聖杯を求める逃走劇もとうとう最終段階にきた。数々の宗教的な薀蓄と複雑な謎解き。そのすべてが本作を読むことで納得し、すっきりとすることができるかと思いきや・・・・。意外に消化不良だった。やはり実在する謎を物語りに盛り込むと、その解決方法は工夫しなければならないのだろう。すべてがフィクションでということならば、いくらでも読者を納得させようがあると思うが、真実に基づくとなるとそれも難しいのだろう。ジレンマを感じた。
■ストーリー
ティービング邸で暗号解読の末、彼らが辿り着いたのは、ダ・ヴィンチが英知の限りを尽くしてメッセージを描き込んだ“最後の晩餐”だった。そしてついに、幾世紀も絵の中に秘され続けてきた驚愕の事実が、全貌を現した!祖父の秘密とその真実をようやく理解したソフィーは、二人と共に、最後の鍵を解くため、イギリスへ飛ぶ―。
■感想
キリスト教を根底から覆す、歴史的な謎が今明らかに!!なんていう煽り文句がぴったりとくるような気の持たせようが上、中巻にはある。そこまで持ち上げたテンションを果たしてこの下巻でうまい具合に消化させることができたのだろうか。おそらく、できてはいない。読者が納得するのはすべてを明らかに。無理だとはわかっているがある程度の結論を出してほしかった。
結論がでないからといって、本作が駄作かというとそうではない。二重三重の謎や、すべての黒幕である導師の存在。その導師がどのようにして聖杯の謎にたどり着いたかなど、今までの上、中巻を読んできたものにとっては非常に興味深いことが解決されている。ただし一番の謎が分からずじまいなので、すべてがかき消されている感がある。
どこまで物語にリアルさを求めるか。作中の謎のみ実在するものを扱った本作のような手法ではどうしても突飛な解答を出すわけにはいかない。それをやってしまうと、すべてが嘘くさくなってしまうので、無理なく誰もが納得する最大公約数的な解決方法しかない。それがわかっているだけに、あえてこれほど話題になったのだから、何か別の回答を用意しているのかと期待してしまった。
上、中、下巻とおして宗教色が強く、なじみのない人にとっては辛いかもしれないが、これを機会にこの分野に興味をもってみるのも悪くはないと思う。現に僕自身、ちょっと宗教の歴史に興味を持ってしまったからだ。
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