文体とパスの精度 


2006.7.20 今も昔も変わらない中田 【文体とパスの精度】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
今まさに話題の中田がフランスW杯前から日韓W杯前までの村上龍との交流がまとめられている。本作を読む限りは中田の考え方は今も昔も変っていないように感じた。日本サッカー界にとって中田の存在はよかったのだろうが、今考えると登場するのが早すぎたようにも感じた。実際にセリエAで満足に活躍したといえるのは中田だけで、中田は特別なのかもしれない。小野や中村ががんばってもセリエAはまだまだ遠い存在なのだろう。中田の登場により日本人はセリエAで通用するという考えが世間に充満したが、それは間違いのような気がした。中田は特別だったのだ。

■ストーリー

中田英寿の考え方や言葉を、よりわかりやすく、より広く伝えたい―。村上龍のその思いが結実した、六年間にわたる対談とeメールによる往復書簡。サッカーというスポーツ、そして「世界」でいかに戦い、いかに生きるか。本書はサッカーファンのみならず、自立した「個」として生きようとするすべての人に贈る、アスリートと作家の交流の記録である。

■感想
W杯予選の裏話。普段の生活。セリエAの試合での裏話。サッカーへの取り組み方。今やわりとあたり前になってきた中田の特徴的な性格が存分に現れている作品。それに対して決して否定はしていない。サッカーの話題だけでなくそれ以外にも中田が興味をもつことについていくつか語られている。悪魔のパス天使のゴール製作での裏話など、実際に村上龍が中田に取材をし、それを元に描かれた作品だと知って納得できる部分が多々あった。

中田と村上龍の対談形式なのだが、中田の
プライベートに関しては驚くほど触れられていない。特に普通の成人男子ならば必ず出てくるといっていい女関係の話がほとんどでてこなかった。こいゆう些細なことから中田がゲイではないかと余計な誤解を生む原因になっているのかもしれない。もしかしたら中田のことだから意図的にそうゆうふうな流れにもっていっているのかもしれないが。

中田という存在が日本サッカー界にどれほど大きな影響を及ぼしたか、本作を読む限りは普通の青年がたまたまサッカーがうまくて、たまたまセリエAというイタリアのリーグでプレイして、たまたまローマというチームで優勝してしまった。なんかそれほど大したことないような雰囲気になっている。おそらく村上龍はそうは思っていないが、中田本人はそんな軽い気持ちだったのだろう。本作を読むと対談形式なので辛く苦しい部分は一切表現されていない。あるのは結果とその後の感想だけだ。これだとますます中田は何も努力なしにとんとん拍子に進んでいるように思えてしまう。

作中でも、そんなことはないと否定していはいたが、どうしてもそんな感想を持ってしまうのは僕自身が凡人だからだろう。



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