2007.1.29 感情移入しすぎて恐ろしくなる 【明日の記憶】
評価:3
■ヒトコト感想
若年性アルツハイマーを扱った作品と言えば、最近では"私の頭の中の消しゴム"を思い出す。~消しゴムが恋愛を絡めた映画らしい作品だとすると、本作は日常誰にでも起こりうるリアルな作品となっている。いろいろな立場の人間が出てくるので誰かしらに感情移入することができるだろう。演出的にもさまざまな趣向がこらされており、まるで自分がアルツハイマーになったような気分になる映像も出てきた。見方によっては最後まで病気に負けずに頑張ろうというメッセージとも受け取れるが、僕はものすごく悲しい物語のように思えて仕方がなかった。
■ストーリー
広告会社の営業マンとして働く雅行は、時に家庭を返り見ないほど仕事に没頭してきた。大きなプロジェクトと娘の結婚を控え、忙しい日々を送っていたが、50歳を前にしたある日、原因不明の体調不良に襲われる。ミーティングを忘れたり、部下の顔が思い出せず、心配になった雅行は病院を訪れ、医師から「若年性アルツハイマー」の診断を受ける。そんな雅行を、妻の枝実子は献身的に支え、一緒に病と闘うことを決心する……。
■感想
今の自分が突然若年性アルツハイマーになったら。~消しゴムが少しうそ臭く感じたのとは対照的に、本作は今まさに自分を含めて身近で起こってもおかしくないほどのリアル感を植え付けられた。だんだんと記憶が欠落していく恐怖。病名を告知されたときの失望感。それらすべてを自分に置き換えて感じとってしまったために、その衝撃度は大きかった。
夫を甲斐甲斐しく世話する妻。ここで少しでも偽善的に感じてしまうと、おそらく物語りにこれほどのめり込まなかっただろう。偽善でもなく、心のそこから一緒に病気と闘っていくという雰囲気。強烈な意思を感じるが、それすらも砕いてしまうほどの威力がアルツハイマーにはあった。一番印象に残っている場面は雅行と枝実子が口論し、気がつくと目の前の枝実子が頭から血を流していた。雅行が食器で殴っていたという場面はなくともそこだけ記憶が抜け落ちたように雅行と同じ気持ちになってしまった。
最後まで病気に立ち向かう。夫婦二人で協力するという流れなのだが、その先には不幸な未来しか見えなかった。娘夫婦に関しては幸せな部分しか描かれておらず、雅行の病気に関しては一切触れられていない。最後の場面で決定的な言葉がでるのだが、この言葉を聞いてもまだ甲斐甲斐しく夫の世話をすることができる妻がいるのだろうか。
リアルなだけに感情移入しすぎて怖くなってしまった。
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