アメリカン・ギャングスター


2008.2.5 実話だけに、しびれる 【アメリカン・ギャングスター】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
実話を元にした作品。ギャングのボス役にデンゼル・ワシントン、正義の刑事役にラッセル・クロウ。この配役はまぁデンゼル・ワシントンはギャングのボスといいながらも、ファミリーを愛し弱いものにやさしいという雰囲気がぴったりに感じた。しかし、ラッセル・クロウはどうだろうか。賄賂を受け取らない精練な刑事というイメージはない。どちらかというと、賄賂漬けにされた不良刑事というイメージのほうが強い。そんな二人だが、作品の緊迫感は相当なものだ。どこかゴッド・ファーザー的でもありながら、チームを組んで麻薬組織を壊滅しようとするあたりはミュンヘンのようにも感じた。本作は実話だけに、しびれるものがある。そして、結末に流れるエピローグ的な説明が、物語の重厚さをいっそう際立たせている。

■ストーリー

1970年代の初頭のニューヨークで、ハーレムを牛耳っているギャングのボスの運転手をしていたフランク・ルーカス(デンゼル・ワシントン)は、ボスの亡き後、東南アジアの麻薬を密輸する計画を決行する。時に横暴ともいえる強引なやり方で財力をつけたフランクは、マフィアにも一目置かれる麻薬王として街に君臨する。

■感想
今まで映画として麻薬を扱うギャングは、悪役として描かれていたような気がする。本作は、今までの流れから逆らうように、麻薬売買からのし上がるギャングがメインで描かれている。ファミリーを大切にし弱気を助けるフランクなのだが、その影に隠れて、麻薬中毒で死ぬ人々や、親が中毒で死に孤児となった子供たちもしっかりと描かれている。良い部分だけを見せるハリウッド的なスターシステムではないというのを感じさせられた。

もう一人の主役であるリッチは見た目的に正義の刑事というようには見えなかった。少し意外といえば意外な配役だが、そこは妻との離婚問題なども絡め、ラッセル・クロウで間違いはないというような感じになってくるから不思議だ。賄賂を決して受け取らない正義の刑事であり、リーダーシップもある。麻薬撲滅のため、チームを結成し正義の刑事ばかりを集める場面では、まさにミュンヘンのようにチーム自体にいいようのない、国を守るという強烈な誇りのようなものを感じた。

どこかゴッド・ファーザー的でもあり、実話を元にしているだけに、都合の良い終わり方はしない。ある意味、ギャング版のサクセス・ストーリーなのかもしれないが、その時点では特別スターというような印象はもたなかった。それはおそらく麻薬売買という部分が引っかかっているのだろう。突如現れたギャングのボス。そして、汚職が蔓延した警察組織。最後にはリッチーにより、すべてを正義の名の下に制裁を加えるのだが、そこでやっとスターという意味がわかったような気がした。頂点まで上りつめ、そして没落していく。盛者必衰の理どおりの展開なのだが、ラストの流れは実話ならではなのだろう。

エピローグ的な説明が流れる場面では、本作のすばらしさがにじみ出ているような気がした。



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