2007.12.17 粋でいなせな泥棒家業 【天切り松闇がたり2】
評価:3
■ヒトコト感想
前作から引き続き、目細の安吉一家の物語となる。居あい抜きの達人であったり、しびれるような詐欺であったり、大正ロマンの雰囲気と、素晴らしい登場人物たちが縦横無尽に動き回る。粋でいなせな泥棒家業。義賊一家の大活躍を読むだけで、心躍るような気分になってくる。現在の病んだ社会への警告のような話や、義理人情に厚い、昔ながらの侍魂の話まで。隠居したじじいの茶飲み話的に聞こえなくもないが、興味を引かれるから、続けて読んでしまう。頭の中は大正ロマンでいっぱいになった。
■ストーリー
ある日、目細の安吉一家に客分として現れた、時代がかった老侠客。その名も山本政五郎―すなわち幕末から生き延びた、清水の次郎長の子分・小政だというのだが…。表題作「残侠」など、天下の夜盗「天切り松」が六尺四方にしか聞こえぬ闇がたりの声音で物語る、義賊一家の縦横無尽の大活躍八編。粋でいなせな怪盗たちが大正モダンの大東京を駆け抜ける、感動の傑作シリーズ第二弾。
■感想
粋でいなせな安吉一家。こんな家族がいたらと憧れるような素晴らしい一家だ。実際に血のつながりはないはずなのに、血のつながり以上の強い絆を感じてしまう。親がいて兄貴分がいる。松を本当の弟のように可愛がり、そして、技を教え込んでいく。昔ながらの師弟制度がそこにはあり、現在ではありえないような、強い絆と、暖かさを感じることができる。もし、仕事をする上司や先輩がこの安吉一家のような感じだったら、なんてことを考えてしまった。
安吉一家に客分としてやってきた清水の次郎長の子分である小政。この小政がまた、昔ながらの義理人情を重んじる好人物だ。居あいぬきの達人で、剣にのみ生きる男が一宿一飯の恩義を感じ、恩返しをする。なんてことない話のはずなのに、心に残るのは、泥棒家業といいながらも、周りとの調和を大切にしている安吉一家という、思いがあるからだろう。公然の秘密となっている泥棒一家。こんな状態が成り立つのも古きよき時代のためだろう。
松のためには、労をいとわない親分や、兄貴分たち。家一軒買えるほどの大金をさらりと捻出するあたり、男気を感じるというか、ものすごく頼りになる男たちだと思った。成金からあっさりと大金を盗み取り、それを義のために、簡単に使い切ってしまう。この豪快さが、本作の魅力の一つだろう。大金をせしめとっても、それをちびちび使うなんてことはせず、決して必要以上の金をむしりとることもない。仁義を通したその行動にしびれてしまう。
大正ロマンという時代がよかったのか、今の時代が悪いのか。仁義を重んじるこの雰囲気は好きかもしれない。
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