FINE DAYS


2006.10.8 恋愛小説ではない 【FINE DAYS】

                     
■ヒトコト感想
恋愛小説というよりもほのぼのとしたミステリーか。どことなく乙一の短編集にも雰囲気が似ている。どちらかといえば好みの部類なのだがインパクトに欠けている。読み終わった後にどんな作品が収録されていたかと、はっきり思い出せるのは一部しかない。さらっと読めてしまうゆえの弊害なのかもしれないが・・・。読んでいる間はそれなりに楽しんではいるが、印象に残らない。それは恐らく頭の中に映像として思い浮かべることができないからだろう。そうは言っても前半に登場する作品はファンタジー溢れる作品で、強く印象に残っている。乙一が好きな人にはおそらくぴったりとフィットするだろう。

■ストーリー

死の床にある父親から、僕は三十五年前に別れた元恋人を捜すように頼まれた。手がかりは若かりし頃の彼女の画。僕は大学に通う傍ら、彼らが一緒に住んでいたアパートへ向かった。だが、そこにいたのは画と同じ美しい彼女と、若き日の父だった…

■感想
現実的ではない、オカルトとか非現実的な部分が多いのかもしれない。どこか雰囲気としては世にも奇妙な物語として出てきたとしても不思議ではない。それはすなわち乙一のような作品と言い変えてもいいのだろう。1つの作品に1つのテーマというように非常にシンプルになっている。そのおかげで読んでいて混乱するようなことはなく、サラリと読み進めることができるのだが、下手するとサラリと読めすぎるためにまったく印象に残らないというような結果になりかねない。

ミステリーっぽくもあり、ちょっと不思議な出来事が起きる作品は自分の中ではかなり好きな部類に入る。乙一が好きだということでもわかるだろう。そんな僕にしても好みのタイプではあるのだが、読み終わったあとに心に残るものが何もない。興味がある作品ならば読み終わった後に強烈なインパクトを残していくはずなのにだ。

読んでいる間中思ったのは、どこか他の作者の影響を多大に受けているような気がした。誰というのはあえて書かないが、登場人物同士の会話のキャッチボールなど、まさにその印象が強かった。それが駄目だというわけではなく、その部分は楽しんで読むことができた。しかし決定的には
個性がないというのが一番なのかもしれない。

結局本作はなんだったのか。恋愛小説だとは到底思えない。かといって他に何か特徴があるかというと僕には表現する言葉がない。あえて言うならば乙一のような作品ということしかない。



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