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 2008.5.22  なんだか知らんが力がわいてくる 【69】  

                     

評価:3

■ヒトコト感想
映画を先に見た関係上、登場人物のイメージはすでに固まっている。映像と文章の違いはあれど、そのテンションの高さはしっかりと感じることができる。何のポリシーもなく、ただ女にモテたいということがすべての行動原理となる。主人公のケンがふざけたキャラクターというのに変わりはないが、映画よりもさらにどうしようもない感じが良く出ている。バリ封前夜のハイテンション具合。ただ聞きかじったことだけをぺらぺらと並び立ててはいるが、相手をアジテーションする勢い。全ては高校三年の無鉄砲で何でもありな時代だからこそできたことだろう。権威に反発するというのは、どの立場になっても多少共感できる部分がある。そういった意味で、今読んでも十分楽しめる作品だ。

■ストーリー

1969年、東大は学園紛争に揺れ、街にはビートルズが流れていた。九州の西端、基地の町で、高校三年の僕は楽しいことを探していた…。

■感想
妻夫木が演じたケン。そのままのイメージで本作を読んでもしっくりくる。相手を適当な弁舌でごまかしながら自分の欲望のおもむくままに物事を進めようとする。特に何か反省の態度を示したり、相手に対して言いくるめる場合に、最初は真剣にまじめなことを考えてはいるが、~なんてのは嘘で、と続き、とんでもないことを頭の中で考えている。これは映像ではなかなか表現できない部分であり、原作ならではの強みだろう。このことで、よりケンという人物がいい加減だという思いが強まったが、面白い部分でもある。

時代的なものもあるのだろうが、バリ封というのがどの程度大きなことなのか、理解するのは難しかった。しかし、刑事が家に来るくだりでは、さすがに緊迫感は増しており、段々と事態の大きさが理解できた。未成年であればこそ許される行為であり、自分が高校時代にはたいしたこともやらず、平凡に過ごしたことを少し後悔した。もし、高校時代に本作を読んでいたら、何かしら感化されていたことだろう。分別のある、今の時期に読んだのが、幸か不幸かあまり影響はない。それは悲しいことでもあるのだが…。

全てが作者の実体験だとは思わない。しかし、多少脚色されているとしても、似たようなことをやっていたのだろう。今や作家として大成功した作者。高校時代にこんなバカなことをやりながら、結局は成功してしまう人生。なんだか、まじめな高校時代を送っていながら、くすぶった人生を送っている者としては納得いかないやら、悔しいやら、複雑な心境は否めない。

何か大きなことをやりたいという気持ちにさせる力はある。ただ、それをやるには若さとリピドーが不足しているのかもしれない。



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