坐禅ガール [ 田口ランディ ]
評価:3
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■ヒトコト感想
40代後半の作家のよう子と整形美人となったりん子の物語。どうしてもよう子は作者自身を投影しているように思えてしまった。男なら誰もが目をとめるほど美人なりん子と偶然出会い、家に泊めることになったよう子。のちにりん子が整形美人だということが判明するのだが、男からの目線と女からの目線ではりん子の顔に対する評価が大きく異なっているのが印象的だ。
男は表面的なものしか見ていないということなのだろう。女は全体のバランスで美人かどうか判断する。整形で不自然に作り上げられた美女は、どこか不安定なのだろう。表紙とタイトルからポップな作品の印象となるのだが、実際にはかなりシリアスな物語となっている。
■ストーリー
薄幸の美女りん子に救いを求められた40代の作家よう子。心を閉ざしたままのりん子をもてあましていた時、アメリカからやって来た女性の禅マスターに導かれて坐禅をすることに。二人の内面が交差し、失われた恋や、家族の死、コンプレックス、若さへの執着……女の悩みが露呈していく。心には煩悩が渦巻くばかり。足の痺れの先に、光は見えるのか。
■感想
行き倒れのような状態であったりん子を拾ったよう子。顔は整っているが、アンバランスな雰囲気からりん子に危うさを感じるよう子。そのまま家に住まわせるというのはぶっ飛んでいるのだが…。りん子のパートとよう子のパートが描かれている。
よう子からするとりん子は不可思議な存在でしかない。顔が整っているのにどこか不幸な雰囲気が前面にでているりん子。りん子の不幸な体質の正体は、その後のりん子のパートで描かれることになる。。中盤までは、りん子が純粋に生まれながらに美人だとばかり思いこんでいた。
中盤でりん子のパートが描かれるのだが…。そこで衝撃的な事実が明らかとなる。昔流行った整形番組にりん子は出演していた。すさまじく不細工な顔面が整形により美人になったのがりん子だった。顔が整形で美人になったことで幸せになるかというと、そうではない。
恋人を東日本大震災の津波で亡くすという不幸はあったにしても…。りん子の不幸はどこか自業自得のような感じだ。よう子はよう子でそれなりに幸せではあるが、満たされない何かがある。
座禅により生まれ変わる。座禅が何か劇的な薬になるかというとよくわからない。ただ、作中のりん子やよう子に対しては間違いなく、座禅により精神が浄化され良い方向へと向かっていくのだろう。りん子がそれまでの自分の生い立ちを含め回想する。
幼少期より顔のことで様々な嫌な思いをしてきたりん子が、整形したことで新たな人生を歩めるかと思いきや…。そこには決して幸せがあるわけではなかった。よう子の旦那がりん子に手をだしたなど、泥沼な展開とならないのが、唯一の救いだ。
想像よりもシリアスな展開だ。