寄る辺なき時代の希望 人は死ぬのになぜ生きるのか 


 2026.8.27      水俣病、障碍者、原発、老いなどのエッセイ 【寄る辺なき時代の希望 人は死ぬのになぜ生きるのか】


                     
【中古】寄る辺なき時代の希望 / 田口ランディ (単行本)
評価:3
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■ヒトコト感想
田口ランディのエッセイ集。ノンフィクションであり作者の人生が詰まっているような作品だ。他のエッセイなどで、ある程度エッセンスは語られているので、特別な驚きはない。両親や兄との関係。母親がどのような状況だったのか。父親との関係性。そして孤独死した兄との関係。根本はこの経験がベースとなり、それぞれのエッセイにつながっていく。

原子力発電所関係は作者の他作品でもかなり言及されているので、その流れの印象がある。唯一、意外だったのは「水俣」についてだ。様々な出来事の中で、作者が水俣病についてここまで関連していたことに驚いた。この部分は、他のエッセイや作品ではほとんど触れられていないので、新鮮な気分で楽しむことができた。

■ストーリー
この希望なき時代に,人はなぜ生きようとするのか。「べてるの家」に,「水俣」に,「チェルノブイリ」に,そして「老い」に,一筋の光明を追い求める衝撃のノンフィクション!

■感想
「水俣」は、作者が水俣病の患者と交流する物語だ。教科書で知っている程度の水俣病の知識であれば、現地の人々の声というのは衝撃がある。母親が水俣病に感染し、村中から忌避の目で見られる。父親が仕事に行くのに、道を通らずに鎌をもって藪を狩りながら進んだというのは強烈だ。

それだけ村人たちと会わないようにしていたということだ。病気になった人をひたすら排除しようとするのがすさまじい。まさに、現代のコロナ感染者のような感じかもしれない。その後、成長した娘の話なども強烈だ。

「べてるの家」は、障碍者との交流が描かれている。北海道の地で、独自に運営していた施設。施設の運営よりもその思想が印象的だ。三度の飯よりミーティングというスローガンがあるように、頻繁に話し合いを行うようだ。

作者が当初感じた印象は、障碍者が暴れる姿を見て怖いと感じたようだ。それは正常な反応だろう。周りの人たちが普通にしていることや、次第に慣れていくなど印象的なエピソードがある。作者が講演会を行った際に兄のことを話したことの場違い感などが強く印象に残っている。

作者の兄が孤独死したタイミングで作者が妊娠する。そして、兄の死でふさいでいた母親は作者が妊娠したことを兄の生まれ変わりだと言う。この母親の気持ちはわからなくもないが、作者からしたら良い気分ではないだろう。

ただ、それでも兄との関係性や何もしなかった兄に対する思いが変わっていく過程で、理解できるようになっている。複雑な家庭環境であり、普通ではない死に方をした兄をもつと、スピリチュアルに傾倒するのもうなづける展開かもしれない。

作者の小説作品の原点となるようなエッセイ集だ。



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