2025.3.3 70年代の在日韓国人たちの苦悩【焼肉ドラゴン】
焼肉ドラゴン【Blu-ray】 [ 真木よう子 ]
評価:3
■ヒトコト感想
1970年代の大阪を舞台にした物語。韓国から戦争のために日本につれてこられた在日韓国人が経営する焼肉店を舞台に騒動が巻き起こる。トタン屋根でボロボロの建物の中で焼肉屋を営む。常に近所の同じような在日韓国人のおじさんたちのたまり場となっている。焼肉屋の3姉妹は、長女は足に怪我を負い、足を引きずりながら歩いている。
次女は結婚したはよいが旦那と不仲で離婚間近。三女はキャバレーの店長と不倫関係にある。それぞれが問題を抱えており、在日韓国人ということで様々な問題がある。一番下の長男が私立の高校に通っているのだが、在日ということでいじめられている。韓国語と日本語が入り混じりながら、当時の雰囲気を強烈に表現している物語だ。
■ストーリー
万国博覧会が催された1970(昭和45)年。高度経済成長に浮かれる時代の片隅。関西の地方都市の一角で、ちいさな焼肉店「焼肉ドラゴン」を営む亭主・龍吉と妻・英順は、静花、梨花、美花の三姉妹と一人息子・時生の6人暮らし。失くした故郷、戦争で奪われた左腕。つらい過去は決して消えないけれど、“たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとえぇ日になる"それが龍吉のいつもの口癖だった。そして店の中は、静花の幼馴染・哲男など騒がしい常連客たちでいつも賑わい、ささいなことで、泣いたり笑ったり―。そんな何が起きても強い絆で結ばれた「焼肉ドラゴン」にも、次第に時代の波が押し寄せてくるのだった―。
■感想
大阪で在日韓国人たちが暮らすエリアがある。トタン屋根のあばら家が密集した地域。小さな焼肉屋には、常に近所のおじさんたちがたまり場として酒を飲んでいる。在日韓国人として日本で生活してきた者たち。
在日一世は戦争に駆り出され父親は戦争で片腕を失ってしまう。二世たちは、韓国語がろくに話せないが、日本では在日韓国人として不遇な扱いを受ける。かといって、韓国に帰ったとして韓国語が話せないので、ろくな仕事ができない。そんな八方ふさがりな状況が、イライラとなって鬱屈している。
長女の静花と幼馴染の哲男には何かしら因縁があるのがわかる。幼いころにふたりで遊んでいる場で静花は足に怪我をして、びっこを引くことになる。このことが静花は負い目となり結婚できずにいる。哲男はなぜか次女である梨花と結婚するのだが…。
梨花も哲男が静花のことが好きだというのは気づいていた。非常にいびつな関係性があり、静花のどうしようもない気持ちと、哲男のやりきれない気持ちというのは、見ていて辛くなる。最も不幸なのは、離婚せざるお得ない状態となった梨花だろう。
長男が学校のいじめを苦にして自殺してしまう。日本で生活するためには、日本の高校で頑張らなければならないという父親の気持ちが重荷になっていたのは明らかだ。在日韓国人だからといじめられるのはあたりまえにあったのだろう。
三女は不倫の末に略奪愛をものにしている。高度経済成長の時代の大阪で、在日韓国人の住むエリアは地上げにあい、焼肉ドラゴンは廃業せざるお得ない。70年代の雑多な雰囲気は、在日韓国人のエリアであればなおさら強烈なのだろう。
当時の雰囲気がよくわかる物語だ。