VESPER/ヴェスパー【Blu-ray】 [ ブルーノ・サンペル ]
評価:3
■ヒトコト感想
この世界観が強烈で、それ以外はもしかしたらあまり見るべき部分はないのかもしれない。科学技術が崩壊したような世界で、地上には奇妙な植物や生物がはびこる。特に人間の体に管を刺し何かしら栄養を人間から得るような植物や、人間の身体を突き刺すほどのスピードを出す蛍のような生物など。冒頭で少女ヴェスパーが丸いドローンを従えて奇妙な森の中を進む。
生態系が壊れており、普通の生活ができない。みみずを食料としていることから、まともな穀物は育たない環境なのだろう。妙な技術は進歩しており、ひん死の父親はベッドに寝たまま、ドローンから父親の声が聞こえてくる。ドローンの中はメカニカルではなく生物的なヌメっとした内臓のようなものが見えるのも強烈だ。
■ストーリー
生態系が壊れてしまった地球。一部の富裕層のみが城塞都市“シタデル”に暮らし、ほとんどの貧しい人々は危険な外の世界で僅かな資源を奪い合うように生活していた。そんな外の世界に寝たきりの父と二人で暮らす13歳の少女ヴェスパーは、ある日危険な森の中で倒れている女性カメリアを発見する。シタデルの権力者の娘であるという彼女は、共に墜落した飛行艇に乗っていた父親を探してほしいとヴェスパーに頼み込むのだが…。
■感想
危険な外の地域でみすぼらしい生活をしているヴェスパー。この世界の仕組みが本作のメインなのだろう。薄暗い空の中でまともな植物が育っていない。食べ物もなく、ガラクタを集める乞食のような存在もある。
顔を布で覆ってガラクタを集めて家を作りそこで生活する。なんだかこの世界観だけで物語は成立しているようだ。若い子供の血をシタデルの富裕層に売る。上流階級とそれ以外の格差がすさまじいのだろう。人間とは別に人工で作られた生物もいる。真っ白な人間のようだが会話ができない人工生物は妙に気持ち悪い。
全体がヌメっとした内臓のような雰囲気がある。何かにつけて透明な粘膜のようなものが絡みついている。ヴェスパーが従えているドローンは、父親の意識が入っており会話ができる。そんなメカニカルなシステムでさえも、蓋を開けてみると中身はヌメっとした内臓のようなもので占められている。
その内臓に手を突っ込んでジャイロを調整するだとか…。下手に高度な科学技術がありながら、アナログの部分も多い。ヴェスパーがシタデルからやってきた女性を助けたことで事態は大きく動き出す。
ごちゃごちゃありながらも、最後はよくわからないまま終わっている。結局、シタデルの映像は登場してこない。シタデルの兵士がヴェスパーたちを追いかけてくるのだが…。そこで下界の恐ろしい昆虫にやられてしまう。
結局は、ヴェスパーの父親は死に、ヴェスパーはシタデルに行くことはできない。夢も希望もない世界ではある。この世界観が本作のメインであり、ストーリーはどうでもよいのだろう。ヴェスパーの叔父は何を目的にしていたのかも、最後まで不明だ。
この説明不足の部分が気になってしまう。