ウルトラ・ダラー 


 2026.6.10      国家レベルの偽札づくりのすさまじさ 【ウルトラ・ダラー】


                     
ウルトラ・ダラー【電子書籍】[ 手嶋龍一 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
実在の事件をモデルとしているような偽札の物語。タイトルにあるウルトラ・ダラーは見分けのつかない精巧な偽札のことだが、偽札はひとつのきっかけにすぎず、その先にある壮大な野望が本作のメインとなっている。実際に国際情勢で問題となっていることを先取りするような展開もある。偽ドル札を作るためには、技術のある彫刻職人が必要で、スイス製の高性能印刷機と紙幣用の特殊な紙が必要となる。

よく考えると紙幣として大量生産されている物とまったく同じ物を数十年と誰にも模倣されないなんてのは難しいはずだ。技術的には日々進歩しており、いくら特殊な紙だといっても再現は可能となるはずだ。印刷機についてはデジタルな高性能印刷機でいずれ対応可能となるのだろう。ただ、本作は偽札づくりは最終目的を達成するためのひとつの手段でしかない。

■ストーリー
ダブリンに新種の偽百ドル札「ウルトラ・ダラー」あらわる――。一報を受けたBBCの東京特派員にして英国情報部員のスティーブンは、インテリジェンスを頼りに、国際諜報戦の暗部を照らし出す。浮かび上がってきたのは、米国、中国、北朝鮮の危険極まりなき謀略だった。1968年の日本人拉致から2002年の日朝首脳会談、そして偽札製造までを一本の線でつないだ本作は、「現実の事件が物語を追いかけている」と評された。

■感想
精巧なドル紙幣の偽札が発見された。既存の偽札防止技術では見抜けないほどの偽物が作られた。技術的には可能だとしても、様々な制約をもうけることで、偽札づくりを防いできたというのがよくわかる。

日本の技術者が高性能な印刷機を作った際には、あまりに性能が良すぎるために偽札作りに利用されないように、出荷機器がトレース可能になるなど、強烈な制約がある。本作では過去にさかのぼるように北朝鮮が偽札作りのためにどのような準備をしてきたかが描かれている。

日本の職人を拉致し高性能な印刷機を盗み、紙は本物と同等のものを用意する。単純に外貨を稼ぎたい北朝鮮の苦肉の策かと思われたのだが、実は裏ではもっと大きな国際的な陰謀があった。確かに偽札を作って好きな物を買うだけではすまない。

国家として何を目的とするのか。北朝鮮の本当の目的は偽札を使って大陸間弾道ミサイルを手に入れるということだった。そして、それは北朝鮮の単独というよりは、裏では中国が北朝鮮を操ってアメリカに対抗するために動いていた。

外務省のアジア大洋州局長が登場し、インテリジェンスの工作を行う。国際的なインテリジェンスの罠にはまっていく者。誰がスパイかを見破り、情報収集する者。かなりの地位にまで上り詰めた者が、実は北朝鮮のスパイであるのは強烈だ。

ほんの些細な出来事が相手を脅す材料となる。誰にでも少しは後ろめたいことがあるのでは?と思ってしまった。国家レベルの偽札作りに巻き込まれると、一個人は太刀打ちできないというのがよくわかる物語だ。

実際の事件を彷彿とさせる内容となっている。



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