罪と悪 通常版 [ 齊藤勇起 ]
評価:3
■ヒトコト感想
少年時代に起きた衝撃的な出来事。仲間の中の一人の正樹が何者かに殺された。男色の化がある「おいさん」が殺したと思い込んだ春と朔と晃はおいさんの家に向かい…。少年たちのエスカレートした行動の中で、春がひとりで罪をかぶる。22年後に、成長したそれぞれが同じ町に集う。
春は半グレのような若者を集めて事業を展開している。晃は父親の跡をついで正義感にあふれた刑事となっていた。朔は実家の農家のあとをついでいたが、双子の兄弟である直哉は引きこもっていた。22年後の世界ではそれぞれの人生の変遷がうかがわれる。特に春はヤクザに対してもひるむことなく立ち向かっている。ラストで過去の事件と現在の事件の種明かしがされるのだが…。かなり強烈な結末だ。
■ストーリー
何者かに殺された14歳の少年、正樹。彼の遺体は町の中心のある橋の下で発見された。同級生の春・晃・朔は、正樹を殺した犯人と確信した男の家に押しかけ、もみあいになる。そして、男は一人の少年に殺される。彼は家に火を放ち、事件は幕を閉じたはずだった一。時が過ぎ、刑事になった晃は父の死をきっかけに町に戻り、朔と再会する。ほどなく、ある少年の死体が橋の下で見つかる。20年前と同じように一。晃は少年の殺害事件の捜査の中で、春と再会し、それぞれが心の奥にしまっていた過去の事件の扉が再び開き始める。かつての事件の真相は、そして罪と向き合うということは一。
■感想
序盤は晃たちの少年時代の物語が描かれている。晃をキャプテンとするサッカーチームで活躍する面々。直哉はキーパーというのがわかる。仲の良い親友のような5人。この段階で春は父親が暴力をふるい、母親との関係もめちゃくちゃな家庭崩壊しているとわかる。
晃の父親は刑事であり、春の父親がろくでもないとわかっているようだ。この関係性の中で正樹が死体で発見され、その仇をうつためにおんさんの元に春と晃と朔が向かう。ここから悲劇が始まる。
22年後となり、父親が亡くなったため晃は町に戻ってくる。ここで晃は正義に燃える刑事というのがわかる。不正を許さず、田舎独特の関係者を逃がすような刑事を許せない感じだ。少年時代に罪をかぶった春は半グレの親分のような存在となっており、手広く事業を行っている。
ここでヤクザとトラブルとなるのだが…。春の怖い者知らず感がすさまじい。どこまで覚悟があるのか。家族がいる状態でありながら、ヤクザの親分に対しても自分の筋を通そうとする。春が最も魅力的に描かれている。
現在で春がかくまった少年が正樹と同じような死に方をする。過去の事件を紐解き、誰が犯人なのかを晃と春が調査するのだが…。引きこもりの直哉がすべての犯人だということで終わると思われたのだが…。最後の最後で強烈なオチが待っている。
まさかの人物が犯人だった。過去の事件も直哉になすりつけるために偽装する。不可抗力とはいえ、現在でも過去の事件をもみ消すために新たな犯罪に手を染める。ラストでは犯人はトラックに轢かれて死んでしまうのだが…。これも春の差し金なのだろう。
強烈なラストだ。