とわの庭 [ 小川糸 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
盲目のとわの物語。生まれた時から盲目であり、とわ目線での物語となっている。序盤はとわがネグレクトを受けており、目が見えない状態から母親が逃げ出すという状態となっている。目が見えない状態でのひとりの生活は無理がある。定期的に食料を送り届けてくれる人もいなくなり…。おむつでの生活。掃除されない部屋。そして食べ物がないので、ついには部屋に落ちている香り付きの消しゴムを食べるようになるとわ。
そんな状態から助け出され、人間らしい生活へと生まれ変わるとわ。生まれつき目が見えない人が、どのようにして日常生活ができるようにまでなるのか。とわの心境の変化と盲導犬の協力により、とわは外の生活になじんでいくことになる。。。
■ストーリー
盲目の女の子とわは、大好きな母と二人暮らし。母が言葉や物語を、香り豊かな庭の植物たちが四季の移ろいを、黒歌鳥の合唱団が朝の訪れを教えてくれた。でもある日、母がいなくなり……。それから何年、何十年経っただろう。帰らぬ母を待ち、壮絶な孤独の闇に耐えたとわは、初めて家の扉を開けて新たな人生を歩き出す。清潔な生活、おいしいご飯、沢山の本、大切な友人、一夏の恋、そしてあの家の庭の植物や鳥たち。盲導犬ジョイと切り拓いた新たな世界は、眩い光とかけがえのない愛に満ちていた。涙と生きる力が溢れ出す、感動の長編小説。
■感想
序盤ではとわが目が見えない状態で、母親から生活のすべてを面倒見てもらう状態が描かれている。とわが目が見えない状態の中で、曜日を認識するのは定期的に食料を配達してくれる人の存在や、庭で鳴く小鳥の声で朝を感じているだけ。
そんな母親依存の状態で、母親が失踪するとどうなるのか。一人っきりで家に残されたとわは、家にある食料をあさりながら、どうにか生き永らえている。おむつを履き、家にある食料を食べつくした後には、香り付きの消しゴムを食べたりもする。
盲目でありそれまでの社会経験がない人が、家にひとりっきりにされるとどうなるのか。公的機関に助けられたとわ。そこからとわの新しい人生がはじまる。母親がとわを生んだことを公にしておらず、戸籍のない存在であったとわ。
この状態となると、ここからとわの人生をやり直すのはかなり難しい。盲導犬を使いながら、新たに点字を覚え、そこからさらに人とのコミュニケーションを学ぶ。とわが普通の人としての人生を歩み始める過程も描かれている。何に対しても絶望的になる必要はないと思える流れだ。
とわが普通の人生を歩み始めた時、恋をしたりもする。勝手な先入観として、盲目の人は普通の人生を送るのは難しいと思っていた。実際にはそんなことはなく、部屋に工夫を凝らせば一人暮らしもできるようだ。ラスト間近のとわの生活は、普通に新たに一人暮らしをした若い女性と変わらないように思えた。
幼少期に普通の子供と同じような生活ができない状態であった女性が、生まれ変わることで、普通に生活できるという驚きに満ちた結末となっている。
とわの人生の変遷が描かれている。