たそがれゆく日米同盟 ニッポンFSXを撃て 


 2025.8.23      当時の日本はアメリカに恐れられていた 【たそがれゆく日米同盟 ニッポンFSXを撃て】


                     
たそがれゆく日米同盟 / 手嶋竜一
評価:3.5

■ヒトコト感想
リアルにこの時期のことは子供すぎて知らないのだが、リアルな日本とアメリカの駆け引きがすさまじい。経済大国となった日本。高度経済成長の時期の日本はアメリカにとってかなりの脅威だったというのがわかる。日米合同の戦闘機の開発。アメリカが長年培った技術が日本に奪われ、軍事技術についても日本が世界を席巻するかもしれない恐怖。

日本の経済力がアメリカを侵食していた時期なので、アメリカはより慎重になったのだろう。日米のヒリつく交渉もそうだが、アメリカの議会内部での激しいつばぜり合いも強烈だ。誰もが自分の思うとおりの方向へと進めたいが、邪魔する勢力が存在する。少しの変化で、もしかしたら今の日本の戦闘機はすべて自前で賄っていた可能性があったということだ。

■ストーリー
次期支援戦闘機・FSXを自主開発したい――。それが、日米同盟のジュニア・パートナー日本の悲願だった。だが米国は、ニュー・ゼロファイターを許そうとしなかった。ニッポンが独自の航空機産業を育て、ワシントンから自立していくことを恐れたのだ。国家的ビジョンを持たぬまま、孤立無援の闘いを続ける哀しき外交戦士たちの姿がここにある。

■感想
今ではアメリカの戦闘機を輸入するのが当たり前なのだが、過去、日本は自前の戦闘機を開発しようとしていたことに驚いた。ゼロ戦から続く戦闘機。そこで成功していたら三菱重工は旅客機も成功させていたのだろう。

当時の日本とアメリカの関係が如実に伝わってきた。印象的なのは、アメリカが日本の技術力を極度に恐れていたという部分だ。日本とアメリカが共同で戦闘機を開発する。その際にアメリカの技術を日本に提供した瞬間、日本はすぐに技術でアメリカを追い抜き、世界中に戦闘機を売りまくると恐れられていたようだ。

日米の交渉の詳細は非常に興味深い。お互いが前に進めたいという強い思いはあるが、それぞれの条件は譲れない。ヒリつくやり取りが続く。アメリカ内部では議会をどのようにして抑えるかがかなりの問題となっていたようだ。

戦闘機の日米合同開発に反対する勢力の怒涛の攻めをどのようにして打ち返すのか。議会を説得することができなかったことが、失敗の大きな要因のひとつなのは間違いない。もし、すべてがとんとん拍子にうまくいった場合、どんな結末になっていたのだろうか。

経済大国日本が軍事大国にもなりかねない。アメリカの日本に対する恐れはすさまじい。今の日本はアメリカからはほとんど脅威と感じられていないだろう。仮に今の日本が独自に戦闘機を作ろうとしたとしても、アメリカはまったく介入しないだろう。

この50年で日本はアメリカに対する脅威とはみなされない存在になってしまった。経済大国日本が復活するのか。アメリカの力は弱まっているが、それ以上に日本の力が弱まっているので、相対的に他国に負けるのだろう。

ノンフィクションの緊迫感が伝わってきた。



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