ダンデライオン 


 2025.12.17      11歳が31歳の自分にタイムリープする 【ダンデライオン】


                     
ダンデライオン/小学館/中田永一
評価:3
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■ヒトコト感想
タイムリープものというか、なんというか。下野蓮司が11歳と31歳を行ったり来たりする。11歳から31歳へ移動する場面が一番困難に直面するのだろう。それをしっかりとサポートし、その後の行動をしっかりと理解すればこれほどすばらしいタイムリープはないだろう。

未来を知った状態で過去に戻る。作中でも蓮司自身が語っていたのだが、未来が分かっているのはある意味楽しみはない。自分がプロ野球選手になりたいという夢がかなわないのも知ってしまい、誰と結婚するかもわかってしまう。巧みなタイムリープで殺人犯を探し出そうとする。少しの過去の変化が未来に大きな影響を与える。過去を変えると、必ず同じ未来になるとは限らないのが秀逸だ。

■ストーリー
それは、仕掛けられた出会いだったのか。11歳の下野蓮司はある日、病院で目覚めると大人の姿になっていた。20年の歳月が流れ、そこに恋人と名乗る西園小春が姿を現す。「子ども時代と大人時代の一日が交換されたの 」一方、31歳の蓮司は11歳の自分の体に送り込まれ、ある目的のために、20年前の世界で小春の家へと急いでいた――。

■感想
11歳の状態で突然31歳の自分の体の中に入り込む。普通に考えるとそれまでの人生経験がない状態で、突然31歳にされると混乱しかないだろう。それをしっかり周りがサポートし、短時間だけの入れ替わりなので問題ないのだろう。

31歳になってから何をやるかも決まっている。ただ、ポイントは31歳の蓮司が11歳になったその場所でやるべきミッションだ。それがすべての始まりで、十分な準備期間があったからできたことなのかもしれない。これが逆のパターンだったら絶対に無理だろう。

31歳が11歳の身体になるのはまさに無敵状態だ。それまでの人生経験や知識を生かせる。ただやるべきことは決まっている。小春が殺人者に狙われるのを助けることと、その際に犯人の顔を見ることだった。

強烈なのは、11歳の蓮司は将来プロ野球選手になりたかったのだが、事故によってそれが実現しなかった。複雑な状況により交通事故にあい、それを避けようとして31歳の身体の時に事故の日付をしっかりと聞いたはずなのだが…。1年前に事故にあい、プロ野球選手の夢を絶たれてしまう。このあたりが巧みな制約となっているのが良い。

もし、事故を避けることができ、蓮司がプロ野球選手になっていたとしたら…。未来が変わり小春と結婚することもなく、次の11歳の時にすべきミッションを忘れているかもしれない。うまくできている。何かしら運命から逃れることができないことが、その後の運命につながっていく。

タイムリープでの時代を変えると、その後の未来も変わりそうなのだが…。運命の少しの微調整が働いて同じ未来になる。ロト6や株価の変動などをしっかりと11歳時代に持ち帰っているというのが良い。

タイムリープをうまくつかっている。



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