それは令和のことでした [ 歌野晶午 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
最後の1行であっと驚かされるミステリー短編集だ。タイトルは短編のどれかというわけではない。毒親、ヤングケアラー、不法滞在者問題、LGBTなど、確かに昔からある問題かもしれないが、令和になってから表立って出てきた問題なのかもしれない。どれもが最後の最後にアッと驚かされるような展開となっている。
特に「彼の名は」は、まさに最後の最後に仕掛けがわかり驚きを覚えることは間違いない。少しルール違反な感じはあるのだが…。おそらくは誰もが想像できない仕掛けだろう。令和の時代だからこそ、キラキラネームが当たり前になれば、古風な名前というだけでいじめの対象になるのだと、勝手に自分の中で自己解決して読み進めてしまった。
■ストーリー
著者の企みに舌を巻く!哀しみと可笑しみの令和ミステリー 小学生のときは女男と指をさされ、母親からはあなたの代わりは誰にもつとまらない、胸を張れと言われる。平穏を求めて入学資格に性別条項のない私立の中高一貫校に入るが、いじめはさらにエスカレートし、みじめな姿がSNSで世界中にさらされていく。それは僕の名前が太郎だから――
■感想
印象的なのは間違いなく「彼の名は」だ。親は何かと正義感にあふれており、自分の子供はジェンダーにとらわれない名前にしたいと太郎という名前をつけた。この名前のおかげで太郎は学校でいじめられ続けた。
これだけ見ると意味がわからない。太郎がいじめの対象になる名前だとは思わない。キラキラネーム全盛の時に古風な名前にしたからといじめられているのかと勝手に解釈していたのだが…。ラストの一行でそのからくりが明らかとなる。これほど、1行ですべてをひっくり返すというのは今まで読んだことがない。
「無実が二人を分かつまで」は、無実の罪をきせられた男を助けるためにキャバクラにつとめるミハルが様々な証言をするのだが…。様々な要素が絡んでいる。まずひとつの仕掛けにより、男が絶対に事件を起こすことが不可能ということがわかってくる。
そこから、男を助けるために様々な証言をするミハルが必死になる。男が不法滞在者とわかり、安易に警察に届けることができない。ここで永住権を手に入れるために最も簡単な方法があるのだが…。それもできないラストが強烈だ。
「わたしが告発する」は引きこもりの姉とその弟の物語だ。両親が死んだあとに、引きこもりの姉との関係をどうするのか。親の遺産の分配や姉の存在のやっかいだ。弟があらゆる場面で対策を想定しながら完全な計画を立てたかに思えたのだが…。
実は引きこもりの姉には大きな秘密があった。外部とのつながりがまったくないと思われた姉だが、ネットの時代であればネット上での繋がりがある。それだけであれば現実世界につながることはないはずなのだが…。弟の絶望感はすさまじい。
どれもが新しさを感じるミステリーだ。