それだけが、僕の世界
評価:3
■ヒトコト感想
元ボクサーで母親から捨てられたことを恨みにもつジョハ。適当なアルバイトをしてその日暮らしをしていたジョハが偶然母親と再会し、そこでサバン症候群を患うジンテという弟がいることを初めて知る。ジョハが母親に恨みをもつ気持ちはよくわかる。必要以上にジンテに肩入れする性格も、なんだかジョハがかわいそうに思えてくる。
ジンテはピアノの曲を聞いただけで、すべてをそのまま演奏することができる。サバン症候群特有の特殊能力なのかもしれない。障害をもった成人した弟と、ボクサー崩れで定職につかずにフラフラしていた男の物語だ。母親がジョハを捨てたという自己嫌悪の気持ちが強い反面、ジンテに対しては必要以上に猫かわいがりするのが印象的だ。
■ストーリー
家も仕事もない元プロボクサーのジョハは、17年前に別れた母と偶然再会し、異父弟ジンテもいる家で暮らし始めた。サヴァン症候群のジンテは、一度聴いただけの曲をピアノで演奏できる天才だった。ジョハはジンテが尊敬する女性ピアニストに会わせようとするのだが...
■感想
イビョンホンが元ボクサーのジョハを演じる。幼いころに暴力的な父親から逃げるために母親が失踪した。残されたジョハは父親から暴力を受けながらひとりでたくましく生きていた。元ボクサーという設定はもしかしたらいらないのかもしれない。
暴力的なジョハというイメージを植え付けるのには役立つのだが…。騒ぐジンテをおとなしくさせるために殴ったりするジョハ。序盤では明らかにジンテはジョハを恐れている。そして、最初はジョハに気を使っていた母親も、後半には結構しっかりとジョハに文句を言っている。
ジンテの才能が明らかとなる。サバン症候群であり、何かと周りに迷惑をかけるジンテ。逆に母親からするとそれがかわいいのかもしれない。ジョハが少しでもジンテから目を離すと激怒する。ジンテがやらかしたせいで問題が起きたとしても、母親は何も聞かずに頭ごなしにジョハへ文句を言う。
この時のジョハの表情がなんともいえない哀愁が漂っている。客観的に見ても、ジョハに対する母親の態度は、言葉では謝罪しているが、ジョハよりもジンテを優先しているのは明らかだ。
母親は病気を隠して遠くで仕事をすると言い、ジョハとジンテだけを残す。ここでジョハはジンテのピアノの才能がとてつもないことに気づき、コンクールで優勝できるかも?と期待を寄せる。ジョハを車で轢いた金持ちが実は有名なピアニストだった。
そのピアニストもジンテの才能に気づいている。ジンテの才能が花開くときには、すでに母親はいない。この手の障害をもつ身内がいる場合は、親が死んだあとには兄弟が面倒を見るしかないということなのだろう。
ジンテのピアノの腕はすさまじいインパクトがある。