その後のふたり 


 2025.11.11      異母兄妹のメロドラマ? 【その後のふたり】


                     
その後のふたり [ 辻仁成 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
映画があり、その脚本を担当した作者が描いた作品。映画を見ていないので、どの程度映画どおりなのか不明だ。表題作とは別に「思いもよらない場所」という短編も収録されている。表題作がメインであり、男女の会話形式で物語がすすんでいく。ひたすら会話が続いていき、会話の中でお互いの状況を予想するしかない。

もともとは付き合っていた二人であり、別れたというのがわかる。さらに、深いところまでの話となると、実はお互いに血が繋がっていたというのを知りながら付き合っていたらしいとわかる。腹違いの兄妹の関係。それぞれの母親は二人が付き合っていたことに気づいていたのか…。血の繋がりのあるカップルという禁断の雰囲気はない。

■ストーリー
映画『その後のふたり』(辻仁成監督)と同じ骨格を持ちながら、映画で描かれた世界の裏側に潜んでいたもう一つの真実を文学化。ジャンルを超越する表現者辻仁成の新たな試み。

■感想
純哉と七海は3年ぶりに再会した。終始会話だけで物語が展開されていく。会話の流れの中で、ふたりの関係性がはっきりしてくる。過去に付き合っていて映画の製作に携わっていたというのは伝わってきた。ただの恋人ではない、何かわけありなのは当然として。。。

後半になるとふたりが異母兄妹というのがはっきりする。ふたりはその事実を理解した状態で付き合っていたのか。それとも、付き合った後に知ったのか?お互いの母親はそのことに気づいている節があるのは強烈だ。最も知られたくないのが両親だろう。

映画版を見ていないので、どれだけシナリオに忠実なのかわからない。映画は果たしてヒットしたのだろうか?複雑な人間関係であることは間違いない。何かしら伏線があり、複雑な仕掛けがあれば楽しめるのかもしれないが、使い古された異母兄妹という秘密についても、なんら特別な感情はない。

異母兄妹で結婚できずにショックを受ける、なんてのは令和の時代にはそぐわないだろう。なんとなくだが、昭和の昼のメロドラマのような雰囲気を感じてしまった。

「思いもよらない場所」は、父親が親から引き継いだ家にキツツキが来て悩んでいることと、祖母のへそくりがどこにあるのかを探す孫目線の物語だ。父親が少し親に対してコンプレックスがあり、自分の持ち物になった瞬間に家がキツツキに狙われることが必要以上に気に入らないような描写がある。

祖母のへそくりを孫である主人公が手に入れるために家探しをする。表題作と比べると、やけにほのぼのとした印象の物語となっている。家の壁の木が柔らかい木なので、キツツキに狙われやすいというのは特殊な状況だ。

ふたつのトーンの異なる物語だ。



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