死者は嘘をつかない 文春文庫/スティーヴン・キング(著者),土屋晃(訳者)
評価:3
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■ヒトコト感想
ある日を境に、死者の姿が見えるようになったジェイミー少年の物語だ。死者との会話もできる。そして、死者は絶対に嘘をつけないというのがポイントだ。ジェイミーの問いかけには嘘偽りのない答えを言うしかない死者たち。そんなジェイミーの能力を利用する刑事のリズ、そして、リズの恋人であるジェイミーの母親。死者との会話で良いこともあれば、ジェイミーに危機が訪れる場合もある。
死者と会話できることで、未完了の小説の続きを書くことができたり、連続爆弾魔が次のターゲットとしていた場所がどこだったかを探し出すことができる。ジェイミーの特殊能力は、強制的に真実をしゃべさせられる死者から恨まれる場合もある。危険な能力だ。
■ストーリー
この小説は、「ぼく」ことジェイミーの回想記であり、そしてこれはホラーストーリーだ。そう、だってぼくには死者が見える――。「死人の霊が見える」という、古典的とさえ言える設定。それがキング流に調理されると、他の何者とも違うユニークな物語が立ち上がる。ジェイミー少年は、ものごころついた頃から死者が見えていた。死者の世界にはいくつかの決まりがあるようだった。死者は死ぬとすぐ、死を迎えた場所の近くに、死んだときの姿で現れる。
長くても数日で、だんだん薄れていって消える。普通の生者にはぼんやり存在が感知される程度だが、ジェイミーだけは会話を交わせる。そして、死者は嘘をつけない。文芸エージェントの母。若年性認知症を発症した伯父。母の親友のタフな女性刑事。同じアパートの引退した名誉教授。母のクライアントの売れっ子作家。警察をあざ笑う連続爆弾魔……。ジェイミーはその能力ゆえに周囲の人々の思惑にたびたび振り回され、奇妙な目にあいながら、どうにか成長していく。しかしある事件をきっかけに、いよいよ奇怪な事象が彼本人の身に降りかかってくるのだった――。
■感想
特殊な能力を得てしまったジェイミーの物語だ。序盤では若年性認知症を発症した伯父と母親と暮らしているジェイミー。有名作家の未完成となっていた作品を、作家の死後、作家からその後の筋書きをジェイミーが聞き取ることで母親と協力して作品を完成させる。
このあたりはジェイミーの能力を良い方向に使っているパターンだ。母親の恋人であるリズが曲者だ。刑事でありながら薬物中毒者でもある女。母親と恋人関係にあるため、ジェイミーの能力を知る二人目の存在となっている。
リズが言うとおり、ジェイミーの能力は刑事にはうってつけだ。殺人事件が起きた現場にジェイミーが駆け付ければ、死者から犯人を聞き出すことができる。そこから後付けで犯人につながる証拠を集めればよいだけ。
リズは純粋にジェイミーを犯人逮捕に利用するだけにとどまればよいのだが…。爆弾魔のセリオーの死後、残りの爆弾のありかをジェイミーがセリオーから聞き出すことに成功する。このあたり、セリオーは爆弾のありかを言いたくなかったのだが、ジェイミーの問いかけには真実を言うことしかできないのが強烈だ。
隠された爆弾を見つけ出し、多くの人々を助け出すことに成功したリズとジェイミー。ただその代償は大きかった。セリオーに付きまとわれることになるジェイミー。なぜそうなるのか。ある意味、悪霊に取りつかれた状態なのだろう。
ジェイミーの状況はお構いなしに最後にリズが選んだ死者との会話は…。薬物の元締めの男が隠し持っているはずの大量の薬物を手に入れることだった。生きている人間は嘘をつく。死者はジェイミーから問われると嘘をつけない。となると…。
この特殊能力は続編ができるキャラクターだ。