聖なる母と透明な僕 


 2026.7.2      スピリチュアル具合がさく裂 【聖なる母と透明な僕】


                     
聖なる母と透明な僕 [ 田口ランディ ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
田口ランディの短編集。フィクションとノンフィクションが入り混じった作品。作者がお得意のスピリチュアル関係が含まれた作品もある。特に印象的なのは、父親の死に関する作品だ。父親が末期がんとなり、そのことを父親に告知するのかを悩む。高齢であり今更告知されても、という人もいれば、最後の死期は知りたいはずだと告知を進める人もいる。

結局は作者が選んだ手段としては父親への告知だ。作者的には大騒ぎになるかと思いきや、父親はあっさりと受け入れた。今まで好き勝手にやってきたことへのつけが来たと感じたのだろう。ただ、告知した次の日には認知症なのかとぼけているのか、その話をすっかりと忘れていたというおまけつきだ。

■ストーリー
こんな不条理と不可思議をかかえていながら、私はなぜ平然と生きていられるのか。この世には理解できるものなどなにもない。すべては謎だ。宇宙の誕生も終焉も、人間の生きる意味も、生命現象も、星の存在も、人の心も肉体も魂も、解明できるものなどなにもない。田口ランディの短編集。

■感想
「聖骸布の男」は印象的だ。キリストが死んだときに包まれていた布のを聖骸布というらしい。そこにキリストの姿がプリントされているということで、現代の技術で調べたところ、間違いなくキリストだったということだ。

このあたりの都市伝説的な展開が作者は好きなようだ。キリストの生い立ちからユダヤ教との関係を描きつつ、真実というのはどういったことなのか。肉体と精神とはどのような関係があるのか。世界に広まったキリスト教はユダヤ教と比べて何が優れていたのかが描かれている。

「阿弥陀グッド・ジョブ」は仏教、とくに阿弥陀信仰を現代的な感覚で描いている。自分も仏教についてはあまりよく理解していない。南無阿弥陀仏と唱えることで救われる。実は誰もが一度は唱えたことのある言葉なのかもしれない。

たいした信仰心がなくとも、口癖のように唱えてしまう。人間は死の恐怖に打ち勝つために宗教が作られたというのがある。死んだらどうなるのか。南無阿弥陀仏を唱えていれば、死んだあとにも幸せになれるということなのだろうか。

作者のスピリチュアルな要素が全開となっている本作。作家としてデビュー作がヒットし売れっ子となってはいるが、実は家族に様々な問題を抱えていた。そのことが作者をスピリチュアルに走らせたのだろうか。他作品でもこの手のスピリチュアル関係がちょくちょく登場してくる。

そして、原爆についての話も登場してくる。取材した被災者がその当時は信じられないほど明るく元気で対応してくれたのだが、3年前から元気がなくなり死んでしまっていた。なんだか、しんみりする感じの短編が多い。

作者のスピリチュアル具合がさく裂している短編集だ。



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