醒めながら見る夢 


 2025.4.16      陽菜は間違いなく悪女だ 【醒めながら見る夢】


                     
醒めながら見る夢
評価:3
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■ヒトコト感想
多数の登場人物たちの視点で描かれる物語。序盤は亜紀と陽菜の姉妹の行動がメインに語られている。演出家と亜紀と陽菜の三角関係のゴタゴタがあり、その後、陽菜が緊縛師と知り合いとなる。実はこの緊縛師が陽菜の父親であったという驚きの展開もある。演出家の優児との関係や亜紀が自殺したことにより多方面に大きな影響が起きる。

登場人物の誰もがどこか普通ではない。緊縛師についても理性的ではあるが、異常性があるのは間違いない。この物語の一番のポイントは陽菜だろう。亜紀の婚約者であり演出家の優児を誘惑し、亜紀が自殺するきっかけを作る。その後、別れた父親と再会する。周りを混乱に陥れているのは間違いなく陽菜のなんでもありな性格だ。

■ストーリー
華道の家元後継者として厳しく育てられた姉妹・亜紀と陽菜は、演出家の優児をめぐって三角関係に陥りながら、自らの心のありようを模索する。答えの無い不条理な世界で、行き場を失った愛はどこへ向かうのか――

■感想
陽菜は風変わりな亜紀への対抗心から演出家の優児に言い寄る。このあたり、実の姉の恋人へ手をだすというありえないことをやり続けるのは陽菜の破天荒さだ。幼いころから姉の物をなんでも欲しがる妹の陽菜。最終的には優児を手に入れることはできない。

それでも亜紀と優児が婚約したタイミングで、亜紀に対して真実を告げるのはあまりにもひどすぎる。亜紀がどのような心境になるのかを理解した上での、とんでもなく性格の悪い行動であることは間違いない。陽菜の悪女っぷりが際立つ物語だ。

優児と亜紀の関係は崩壊する。そして、亜紀は自殺とも事故ともわからないような死に方をする。ここからしばらくは優児視点となるのだが…。優児が常に亜紀が生きている前提で劇団を辞めて、亜紀とふたりで暮らそうとする。

明らかに精神的におかしくなっている。これは陽菜が仕掛けたことの結果ではあるが、このことを陽菜は求めていたのだろうか。すべてを悪い方向へと導いているのは間違いなく陽菜だ。その後、緊縛師である父親に出会うのだが…。陽菜は悪女でしかない。

緊縛師と陽菜は父娘関係だと知る前に知り合いとなる。緊縛行為で心の扉を開くという、なんだか怪しい会を開催している父親。そこに立ち寄ることになる陽菜。実の母親との関係が悪化しており、亜紀が死んで陽菜は変化していく。

そこで実は別れた父親が目の前にいることに気づく。すべては陽菜のために用意された物語なのだろう。緊縛師は陽菜から実の娘である亜紀が死んだことを知らされる。顔も覚えていない父親が突然登場するというのはどのような心境なのだろうか。

陽菜は間違いなくすさまじい悪女だ。



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