宰相のインテリジェンス 


 2025.11.15      インテリジェンスのリアルな裏側 【宰相のインテリジェンス】


                     
宰相のインテリジェンス 9・11から3・11へ 新潮文庫/手嶋龍一
評価:3.5
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■ヒトコト感想
NHKのワシントン支局長であった作者が実体験を元にアメリカと日本のインテリジェンスを描いた作品。佐藤優の作品でインテリジェンスの重要性を理解していたのだが、リアルな出来事と合わさることでノンフィクションとして強烈なインパクトのある作品となっている。印象的なのは、911のテロが発生する前に、何度もテロを防げるポイントがあったという部分だ。

パキスタンにいたビン・ラディンを制御できないからとアメリカに移送させる話がきた。これを当時の国防長官であるライスが拒否をした。ビンラディンに明確な犯罪者として裁判に勝てる見込みがなかったかららしい。これが実現できていたら、911のテロは起きなかった。その後、パキスタンを追い出されたビンラディンがアフガニスタンに移動しテロが起きたことがその証拠らしい。。

■ストーリー
CIAを擁しつつも、本土への同時多発テロを防げなかったアメリカ。その後の熾烈な情報戦と、ビンラディン暗殺作戦を遂行したオバマ大統領と高官の時々刻々。一方、外交での失策を重ね、東日本大震災時にも決断を下せなかったわが国の首相たち――彼らは何を誤ったのか? インテリジェンスに精通する作家が混迷の世界を生き抜くための指針を示す。『ブラック・スワン降臨』改題。

■感想
911発生前後のアメリカのインテリジェンスと、311発生時の日本のインテリジェンスを描いている。自国がテロ組織に攻撃されているアメリカの911での混乱ぶりはすさまじい。作者は様々な視点で911を描いている。

貿易センタービルに旅客機が突っ込む。二機目の旅客機が突っ込んだことで、アメリカが攻撃を受けていることが明確となる。この時の様々な関係者の動きがすさまじい。ニュースでは知れない現場の空気感が伝わってくるようだ。テロ組織側での視点もあり、非常に興味深い流れとなっているのは間違いない。

テロを防ぐチャンスはあった。そして、イラクを攻撃する際の大義名分はあったのかなかったのか。イラクに大量破壊兵器が隠されているらしい。それをイラクへの攻撃の理由としているのだが…。インテリジェンスは上位のやりたいことを知ってしまうと、それに阿った情報を上げてしまうらしい。

つまりブッシュはイラクを攻撃したい。その理由がほしい。インテリジェンスの舞台は、戦争への理由のふさわしい情報を自然に集めてしまうことになる。。。

日本の民主党のダメっぷりが強調して描かれている。311での決断力のなさ。それは結果論として悪い結果になったのだが、他の決断をしていたら今がどうなっていたのかはわからない。もしかしたら、もっとひどい状況になっていたのかもしれない。

普天間基地移転の問題についても、首相の決断力のなさに、アメリカの大統領は嫌気がさしていたようだ。このあたり、国際社会から見ると、また首相の評価は変わってくるのかもしれない。安部晋三の評価は国際的には高かったようだ。。

リアルな出来事の裏側とインテリジェンス工作なので、非常に興味深い作品となっている。



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