ロスト7 [ 真山仁 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
日本が核武装するか、しないかの問題。世の中の流れやウクライナとロシアの状況を見ると、核武装して自国を守る必要があるのではないか?という議論をそのまま物語にしたような作品だ。非常に多数の登場人物がおり、それぞれが複雑な動きをするため、物語についていくのがやっとかもしれない。
日本はアメリカの言いなりになっていればそれで良いという考えを捨てさせるような物語だ。もし、アメリカの強制力の上で日本が核武装することになったら、世間はどんな反応を示すのか。。。アメリカの目的が中国と日本を戦争させることにあるというのは、さすがにぶっ飛んでいる。ラストの結末も、日中ヨーロッパ対アメリカなんて図式はありえるのだろうか・・。
■ストーリー
原発至近にスーツケース核!? 突如現実となった核テロの脅威旧ソ連製の超小型核爆弾、通称“レベジの核”が、新潟の原発付近に持ち込まれた。突如、核テロの脅威にさらされた日本政府は、国際謀略のエキスパートにして伝説のスパイマスター・冴木治郎に対処を依頼。その矢先、“ロスト7”を名乗る正体不明の人物から総理官邸に犯行声明が届く。それを皮切りに、国を揺るがす事件が次々に起こり、事態は混迷を深めていく。冴木は、核の行方と“ロスト7”の正体をつきとめることができるのか。そして、“ロスト7”の目的とは? 未曾有の危機を描く本格謀略小説。
■感想
日本に可搬型の核爆弾が持ち込まれたらどうなるのか。謎のテロ組織、ロスト7から現職の首相に向けて脅迫の手紙がくる。ロシアがひそかに製造していたと噂される可搬型の核兵器が日本に持ち込まれた。これは本物なのだろうか。
平行して過去のテロ組織について描かれている。首相の父親がリーダーとなっていた組織。実は首相が絡み、アメリカの命令で日本が核武装に動いていた。それを危惧する謎の組織が首相に対して脅迫を実行したという流れとなる。非常に多数の登場人物が入り混じる複雑な物語となっている。
テロ対策の専門家や内閣官房長官。そのほか、ロスト7のメンバーと思われる者たちひとりひとりの個性が際立っている。ただ、あまりにキャラクターが多数登場してくるので、ついていくも大変かもしれない。アメリカの核の傘に入っていれば安全と思われていた日本。
果たして日本は核武装すべきなのだろうか。アメリカが日本に核武装させようとする理由は何なのか。今までのイメージは中国対、欧米日本の西側諸国という流れが、本作では大きく異なることになる。
アメリカは日本と中国を戦争させたい。中国が新潟原発を攻撃するというフェイクニュースを流す。それに惑わされる日本内部。ただ、ここからがすさまじい流れとなる。中国と日本はお互いの真意を交換し合い、アメリカの策略をすべて見破っている。
ロスト7のメンバーがイギリスを味方につけ、世界に向けて会見までする。日本にやってきたアメリカの国務長官が乗る車に可搬型の原爆を仕掛けたなんて暴挙を行い、都心の真ん中で車を止めると、核爆弾が爆発するなんてのはとんでもないことだ。
アメリカ対日本と中国という新しいパターンの結末だ。