リボン [ 小川糸 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
小鳥をメインとした物語。様々な人が小鳥のリボンと関わり合いになる。余命を宣告された老画家や鳥の保護施設で働く青年。かわいがっていた小鳥を逃がしたことで、それが様々な人の生活に入り込んでいく。リボンという名前の小鳥が何を意味しているのかわからない。そもそもは少女と祖母が小鳥の卵を見つけ、それを人間が温めて小鳥をかえす。産まれたのは一羽のオカメインコだった。
前段として少女の父親が食通であり、居酒屋で希少な生まれる直前の小鳥の卵を食べる描写がある。かなり強烈だ。あえて、ヒナになりかけた卵を食べるのが食通の中では希少価値があるのだろう。その経験が鳥に対してトラウマを生むこともまた当然なのかもしれない。
■ストーリー
小さな命が、寄り添ってくれた――少女と祖母は家のそばで小鳥の卵を見つけ、大切に温めて孵す。生まれたのは一羽のオカメインコだった。リボンと名づけ、かわいがって育てるが、ある日逃がしてしまう。リボンは、鳥の保護施設で働く青年、余命を宣告された老画家など、様々な人々と出会う。人々は、このオレンジ色の頬をした小鳥に心を寄せることで、生きる力を取り戻していく。
■感想
おばあちゃんが頭の髪の毛の中で育て、卵をかえらせたことで生まれた小鳥のリボン。おばあちゃんのすみれさん、そして孫のひばりちゃん。この二人が最初にリボンと出会う。オカメインコなので、人の言葉を覚えて意味もなく繰り返すこともある。
リボンが鳥独特の感覚で自由に移動したりもする。リボンが話す言葉が他者に対して感銘を呼ぶ。そのままリボンがどこかに逃げたとしても、その先で人々をつなげる何かがある。一羽の鳥が繋ぐ人と人との物語であることは間違いない。
作者の小川糸が得意な展開がある。作中に登場してくる食べ物がものすごく魅力的だ。特にアンコとバナナのサンドイッチはかなり食べてみたくなる。リボンが逃げた先で新たな人との交流があり、その人がどのような状況にあるかが描かれている。
ゆっくりとした時間の中で、リボンが人の生活に大きな影響を与えることになる。逃げ出したリボンが最後の短編では再びすみれさんとひばりちゃんの元に戻っているのが良い。すみれさんの最後をみとるようにリボンが戻ってくるのが最高だ。
短編としてベルリンが登場したりもする。作者が生活しているベルリンが舞台となっている。綺麗でファンタジーな話で終わらないのが良い。ただ、鳥に関してそこまで思い入れの無い人にとっては、あまり感情移入できないかもしれない。
鳥をペットとして飼ったことがある人ならば、何かしら感じることがあるのかもしれないが…。作者独自の切り口と、おいしそうな食事の数々とリボンとのほのぼのとしたやりとりが物語のポイントかもしれない。
ほのぼのとした連作短編集だ。