昭和探偵物語 平和村殺人事件 [ 天童荒太 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
昭和の時代を舞台にしたミステリー物語。携帯電話もないAIもない時代なので、ミステリーのトリックも変わってくるのだろう。昭和の日本の田舎の村で起きた連続殺人事件。どこか時代も相まって金田一などを連想してしまう流れだ。このシリーズの探偵役は流しの弾き語りである鯨庭(イサニワ)が事件を解決する。合間に昭和の時代の言葉の解説がある。
自分は昭和生まれなので、そのあたりの解説がなくても理解できるのだが、より詳しい解説なので読んでいて驚きもあった。令和生まれが読んだら驚くことばかりなのだろう。事件としては、本来なら非難されるはずの戦争中のアメリカのスパイが、戦争が終わった途端にGHQから表彰される歪さが根本の原因となっている物語だ。
■ストーリー
ビートルズが日本を訪れてコンサートを開いた一九六六年。昭和四一年。日本の片隅で、或るおぞましい事件が起きた。私にとっては、忘れがたい……というより、いまなお当時の光景といい、匂いといい、感触といい、生々しい記憶で胸が焼かれるような想いがする事件である。加えて、あの悲しみに満ちた出来事には、表向き解決した内容――すなわち、裁判になったり、新聞記事になったりした事実とは、また別の驚くべき真相がある。たとえば被害者の数は、公表された数よりも、はるかに多かった
■感想
本作の語り部は東京の刑事だ。それが人づてに話を聞き物語を成立させている。ギターを手に弾き語りを仕事とする鯨庭は映画女優の宣伝の撮影のために女優の故郷である尽忠村にやってくる。過去のスパイがらみの問題もあり、女優には村に帰ってくるなという脅迫の手紙が届けられていた。
アメリカの圧力で尽忠村を平和村に名前を変えるセレモニーを行う。それに参加するために村出身の女優がやってくるのだが…。昭和という時代背景はミステリーや連続殺人事件の雰囲気にマッチしているような気がした。
村に向かい電車内で女優の母親が何者かに襲われ、その男が列車の外に飛び出して死んでしまう。このあたりも昭和の解説がついている。当時の電車は扉を簡単に開くことができ、外の風と空気を味わうことができたようだ。
今考えるとかなり危険な状況とは思うのだが…。女優の父親がアメリカのスパイではあったが、アメリカからすると戦争を早期に終わらせた英雄として表彰されることになる。この日本国内とアメリカ側との考えの違いや、当時のGHQの力の強さが村に強制力を働かせている。
物語は連続殺人事件へとつながっていく。これこそまさに金田一シリーズを彷彿とさせる流れだ。何かを象徴するように人柱をイメージして石に死体が括り付けられたりもする。女優の父親はスパイであり戦争での被害で左耳を欠損している。
これら細かなヒントと陰惨な殺人事件が物語を盛り上げている。ラストは定番的だが、探偵役である鯨庭が村人と関係者を集めて種明かしをする。チンドン屋の説明があったり、昭和の時代は飲酒運転に寛容だったり、驚きの昭和のうんちくが印象的だ。
シリーズ化されそうだ。