レンタル×ファミリー [ 塩谷瞬 ]
評価:3
■ヒトコト感想
金を払って家族や知り合いをレンタルする。人とのつながりが希薄になり、家族関係が複雑になった現代であれば当たり前のことなのかもしれない。料金は4時間で2万円。これを高いととるか、安いととるかは人によるのだろう。いくつかのエピソードが人を派遣する会社の社長目線で語られている。
最初のエピソードがごく普通なのかもしれないが、シングルマザーの家庭に父親として入り込む。母親が娘のためを思って父親を演じる。少し気になったのは父親役の人物が長髪であり後ろで髪の毛を縛っている部分だ。ごく普通のサラリーマンには見えない風貌なのは意図的なのか?それでもしばらく見ているとやさしい父親としてのイメージとなるのが不思議だ。
■ストーリー
子どものために父親を“レンタル”するシングルマザー。束の間の幸せを得る人、金で買える幸せにやがて依存していく人、そして“父親”が実は雇われていた他人だったということを知った子どもーー。家族の在り方も、幸せの価値も多種多様な現代社会で生まれた実在のサービス【人間レンタル屋】 。時代のニーズに応え人の幸せを願い、仕事に真摯に向き合おうとする主人公とサービスにまつわる3つの家族の物語が生々しく綴られる。彼らがたどりついた結末とは…
■感想
高い金を払って子供のために父親のふりをしてもらう。その行きつく先に幸せはない。一つのパターンでは、子供がなついていたころに、別れた夫が急に家にやってきて本当の父親だと暴露する。となると、今まで家に来ていたあの優しい父親とは何者なのか?と子供は思うのだろう。
物心ついたころには言い訳は通用しない。母親がそんなことをしていたと知ると、子供がどう思うのかは考えないのだろう。幼い子供のためを思っての行動は、決して良い方向へはすすまない。
父親だけに限らず、息子夫婦の役を求められることもある。高齢で独身のおじさんが孫や息子夫婦に囲まれて生活することにあこがれている。そのあこがれを満たすために、レンタルで息子夫婦を雇う。単純に3倍の料金がかかるとしても、それを求めているのだろう。
結婚式での親族のふりをしたりだとか、会社の関係者のふりをしたり。結婚するのに、夫にはそのことを告白しているのだろうか?すべてを隠した状態で結婚生活はうまくいくとは思えないのだが…。
ラストのエピソードは強烈だ。レンタル父親として通っていた家の母親が死亡した。葬式の場でもレンタル父親としてふるまっていたのだが…。高校生の娘に対して、母親の葬式が終わった後に自分はレンタルの父親だと告白する。
これは高校生の娘にとってはかなり衝撃的な展開だろう。ショックを受けるのは当たり前で、それまで引っ張り続けてきた母親が一番の問題だ。そもそもレンタル父親を利用しようとする母親というのは、どこかいびつなのは間違いない。
強烈な人生を過ごす人々の物語だ。