蘭医繚乱 洪庵と泰然 


 2025.2.24      オランダ語の私塾で対抗するふたり 【蘭医繚乱 洪庵と泰然】


                     
蘭医繚乱 洪庵と泰然 [ 海堂尊 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
緒方洪庵は何となく名前は知っていた。何をやった人物かはよく知らなかったのだが、本作を読んでよくわかった。泰然についても同じだ。オランダ語を翻訳することや医療について、時代にほんろうされながら、洪庵と泰然がそれぞれのポリシーで生きていく。オランダ語の翻訳が非常に重要であったり、辞書が重要な時代は、当然ながらすべて手作業で文字を写している。

オランダ語を勉強するのも一苦労でシーボルトなどの時代に、漢方の医者よりも西洋の医者がメインとなるという時代の変化が描かれている。驚きなのは、洪庵は子供が大勢いたということだ。二桁の人数の子供がいるのは当時は普通なのだろうか?それだけ育てるのも一苦労なのではと想像してしまった。

■ストーリー
江戸時代後期、医者に憧れを抱くひとりの青年が、大坂なにわ橋の上で佇んでいた。青年の名は田上惟章――のちに「緒方洪庵」と名乗る人物である。貧乏藩士の三男坊だった彼は、大坂で師・中天游と出会い、蘭学にのめり込んでいく。同じ頃、江戸で祝言を挙げるひとりの青年が、医者の道へ歩み出そうとしていた。彼の名は田辺昇太郎――のちの「佐藤泰然」である。

知り合いの商人から異国の話を聞いた昇太郎は、蘭学がこの先の世に役立つと考え……。真面目な洪庵と、破天荒な泰然。長崎で同じ時期に蘭学を学んだ二人は、互いをライバル視しつつも、その歩みは蘭学を大きく発展させ、それぞれ立ち上げた私塾は「西の適塾、東の順天堂」として、若者にとっての憧れの学び舎となっていく。そして二人は、世間を脅かす「天然痘」の撲滅に挑むのだった――。

■感想
江戸時代の末期。医者にあこがれる洪庵と泰然は、それぞれ蘭学に関する私塾を開く。メインは各自の塾についての物語となる。真面目な緒方洪庵と破天荒な佐藤泰然。かろうじで緒方洪庵については名前を聞いたことがある程度だ。

その洪庵の私塾出身者は有名人が多い。特に驚いたのは福沢諭吉も洪庵の塾出身だったということだ。オランダ語を使った医療が最先端の技術である時代に、オランダ語の翻訳や活用については、かなり強烈なインパクトのある流れとなっているのだろう。

長崎で同じ時期に蘭学を学んだふたり。洪庵がくそ真面目で損をするタイプのように思えた。正反対の泰然は、破天荒すぎではあるが、その行動は理にかなっており、洪庵に比べて世渡りもうまく、成功しているように思えてしまった。

世の中の評価がどうなのかはわからないが、洪庵に比べると泰然の方がインパクトのある結果を残しているように思えた。最終的には洪庵は泰然の息子に暗殺されたような流れとなっている。歴史的な事実がどうなのかは不明ではあるが、強烈な流れであることは間違いない。

「天然痘」の撲滅に活躍したふたり。作者のこの手の作品では、ひとつの病気がテーマとなっている。北里の件では、脚気について描かれていた。天然痘も、事前にワクチンを投入することで天然痘での死者を減らすことに成功したようだが…。

ワクチンという考え方にはかなり抵抗があったのだろう。軽いとはいえ、天然痘に積極的に感染するということが許されるのか。失敗したら死が待っている。技術の進歩した現在でもワクチンに対しては、それなりに抵抗感があるのだが…。

非常に勉強になる物語であった。



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