俺たちの箱根駅伝 下 [ 池井戸 潤 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
下巻では箱根駅伝の本戦がスタートする。各区間で学生連合を中心にレース展開が描かれている。ひたすらレース描写が続くのだが、それだけでは中だるみするので、テレビ中継側の目線も合間に追加されている。レース内ではリアルに箱根駅伝で有力な青学や駒沢、そして東洋、早稲田という一昔前の上位常連校が描かれている。
ここ数年での上位である国学院は登場してこない。代わりに、どちらかといえば悪役の役割を担う東西大学が架空の大学として登場してくる。そして、優勝校もあえて架空の大学にしているのだろう。ドラマ化前提なので、実在の大学を優勝させると様々なところから苦情が来ることを見越した配慮なのだろう。一部の実在する学校を出すのもかなりのチャレンジのような気がした。
■ストーリー
ついに迎えた1月2日、箱根駅伝本選。中継を担う大日テレビのスタッフは総勢千人。東京~箱根間217.1kmを伝えるべく奔走する彼らの中枢にあって、プロデューサー・徳重はいままさに、選択を迫られていた――。テレビマンの矜持(きょうじ)を、「箱根」中継のスピリットを、徳重は守り切れるのか?一方、明誠学院大学陸上競技部の青葉隼斗。新監督の甲斐が掲げた「突拍子もない目標」の行方やいかに。そして、煌(きら)めくようなスター選手たちを前に、彼らが選んだ戦い方とは。全てを背負い、隼斗は走る。
■感想
各区間でドラマがある。学生連合として最初から上位に位置するのではなく、第一区では出遅れている。そこから二区のエース区間でばん回し、三区では父親に劣等感をおぼえている周人が自分の過去やトラウマを克服して走る抜けている。
ある程度予定調和的ではあるが、四区では星也が体調不良を起こして大ブレーキとなる。ここで往路のラストである五区の山登りでドラマチックに順位を上げていく。そうなると、学生連合の予想外の健闘により、中継する側も様々な展開を予想し、少ない情報の中で工夫して放送をディレクションしていく。
復路に入ると悪天候となり雪が降り始める。となると箱根の山道での中継が難しくなり、定点中継となったりもする。上巻である程度前振りされていたように六区での転倒と激しいブレーキにより学生連合は順位を大きく下げることになる。
ここから、普段の実力は普通で、1万メートルのタイムは平凡であっても悪天候では想定外の実力を出す選手を選び、その選手が甲斐の予想通りに大活躍する。この段階で学生連合が上位へ行くのは予定調和的な展開となっている。アンカーでは因縁のある人物とのレースが描かれるのも想定どおりだ。
ラストでそれぞれの選手の思いが深堀されていく。中には自分の生い立ちを安易にお涙頂戴ものとして発表してほしくない選手もいる。東西大学は監督含め、そのあたりの気配りができていないことで、最初に勢いよく飛び出したのが、だんだんとスピードが落ちていく。
ラストでは、本作での主役的な立場であり学生連合のキャプテンでもある隼人が、意識を途切れさせながらもトップにギリギリ追いつくような走りをする。あえて、優勝を青学だとか駒沢にしないのは、各所への気遣いなのだろう。
実在する大学を登場させるのは、いろいろと気を遣うことがあるのだろう。