根をもつこと、翼をもつこと (新潮文庫 た 75-6)/田口ランディ
評価:2.5
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■ヒトコト感想
田口ランディのエッセイ集。序盤は広島の原爆記念碑についての取材や原爆経験者へのインタビューや関連番組への出演などが語られている。まったく広島に縁もゆかりもない作者が、広島の原爆やそれらについて語るのは違和感しかなかった。しかし、後半ではいつものスピリチュアルな世界についても語られている。ただ、他作品のようなよくわからないパワーがあるわけではない。
独特な切り口で原爆被害者や加害者であるアメリカに対して語っている。アメリカからすると原爆の彼岸者は悲惨ではあるが、同じくらい、パールハーバーを奇襲されたことの悲惨さがあると言いたいのだろう。物おじせずにタブーにも切り込んでいける作者が描くエッセイ集だ。
■ストーリー
根があるから戻ってこれる。翼があれば自由だ-。困難な時代においても、未来をおそれずに生きる人に捧げる、ピュアな言葉の花束。第1回婦人公論文芸賞受賞後初のエッセイ集。
■感想
印象的なのは「呪い」のエッセイだ。人は言葉で簡単に人を呪うことができるらしい。作者が経験した呪いはすさまじい。意図せずして相手を呪ってしまう魔女のような人物もいるらしい。確かに人は相手の言葉によりかなり大きく影響を受ける。
親が子供に繰り返しぶつける言葉は、意図せずして子供に対して呪いとなってしまうのだろう。恋人に対して相手に反論させないように相手を縛る言葉を続ける。それは呪い以外の何者でもない。言葉がキーワードとなり、いつでも呪いが発動するのは恐ろしすぎる。
「パズル遊び」は印象的だ。作者は大学時代に隣に住む大学生からいろいろな影響を受けた。その大学生は一つの謎をうまくパズルにあてはめ、陰謀論だとかオカルトにも紐づけてしまうらしい。その大学生の影響を受けた者たちは、今でもパズルのように一つの出来事が何かに当てはまることを渇望しているような生活らしい。
現実に戻らず、いつまでも夢や陰謀論に関わっていると、まじめにサラリーマンをするのはむずかしいのだろう。パズル遊びのうまかった学生は、いちはやくまじめな高校教師となり結婚して家庭をもつというのは皮肉な展開だ。
「がんばらない」「あきらめない」「わかったことにしない」なんだか言っていることに矛盾があるようだが、本作読み、内容を理解するとすんなりと受け入れることができるだろう。後半ではスピリチュアルな展開がいつも通り登場してくるのだが、それを他人に押し付けることはない。
複雑な家族関係であり、実のお兄さんが悲惨な死を遂げたことをきっかけとして作家となる。人生経験が豊富であるだけに、これから先は作者にはどんなことが起きたとしても問題ないように思えた。
作者の人生が凝縮されたようなエッセイだ。