名探偵の有害性 


 2025.4.28      過去の名探偵が現代で批判される 【名探偵の有害性】


                     
名探偵の有害性 [ 桜庭一樹 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
かつての名探偵が一般人に戻り、年齢を重ね50代になり過去を振り返る物語。過去の名探偵の事件解決が、現在で検証され炎上する。Youtuberが登場したりと令和の世の中での物語となっている。20年前に名探偵ブームがあり、そこで名探偵四天王が登場したり。。。仮に名探偵がいたとして、過去の事件の失態を今更20年後に掘り起こされるのはたまったもんではない。

それが物語として描かれ50代の元名探偵と元助手が事件の再検証に動き出す。元助手の夫婦は夫が不倫したり問題ありな状況で、元名探偵は離婚済み。男女のコンビではあるが恋愛感情がまったくないというのもポイントかもしれない。50代の元名探偵コンビというのも新しいのかもしれない。

■ストーリー
かつて、名探偵の時代があった。ひとたび難事件が発生すれば、どこからともなく現れて、警察やマスコミの影響を受けることなく、論理的に謎を解いて去っていく正義の人、名探偵。そんな彼らは脚光を浴び、黄金時代を築き上げるに至ったが、平成中期以降は急速に忘れられていった。……それから20年あまりの時が過ぎ、令和の世になった今、YouTubeの人気キャンネルで突如、名探偵の弾劾が開始された。その槍玉に挙げられたのは、名探偵四天王の一人、五狐焚風だ。「名探偵に人生を奪われた。私は五狐焚風を絶対に許さない」と語る謎の告発者は誰なのか?

■感想
過去の名探偵が現在で炎上する。名探偵ブームが過去にあり、そこで素人探偵が名探偵としてもてはやされる。今の時代何が炎上のきっかけになるのかはわからない。20年も前の話題を持ち出され、実はあの事件は間違っていたと非難される名探偵の立場は辛い。

現在は探偵業務をやっていなかったとしても、炎上してしまうと現在の素性までバラされてしまう。そんな状態で、過去の事件を再調査することになる。メインの登場人物である元名探偵と助手がそれぞれ50代というのがポイントだろう。

50代ともなるとそれなりに人生経験をつんでいる。豊富な人生経験の中で、家族との関係や過去の事件を改めて検証することからスタートする。事件としてのトリックの面白さというよりも、過去の事件をどのようにして検証するのかと、関係者たちが今どのような思いでいるのかが物語の面白さなのだろう。

ごく普通に名探偵が活躍する物語のアンチテーゼともいえる作品かもしれない。その場ではヒーローとなりえた名探偵ではあるが、その時の様々な事情が語られている。

元助手は微妙な立場だ。ある意味巻き込まれた形ではあるが、名探偵と共に事件を解決して、その後本を出版して儲けていたのであれば、責任もともなうのだろう。さんざんな目にあってはいるのだが、夫婦関係が壊れるきっかけのひとつでもあったのだろう。

このあたり、作者の思いがかなり詰まっているような気がした。50代の元助手が思う言葉は、そのまま作者の言葉なのかもしれない。作家であれば絶対に過去の作品から逃げることはできない。そんな苦しみが垣間見えた。

シリーズ化するのだろうか?



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