ラストマイル


 2025.12.16    アマゾンをモデルとした巨大EC企業の闇【ラストマイル】


                     
ラストマイル 通常版 [ 塚原あゆ子 ]
評価:3

■ヒトコト感想
巨大なECサイトと物流をテーマにした物語。この作品がアマプラで見ることができるというのが、なんとも皮肉だ。登場する巨大ショッピングサイトのデイリーファストは明らかにアマゾンをモデルにしている。そこでのブラックな労働環境や配送センターの業務はほぼ派遣が実施しており、配送業者には厳しい配送費用の契約を突き付けている。

外資系らしく結果がすべてな雰囲気があり、日本支社のトップは利益を第一に考えている。爆弾騒ぎがあり死人がでたとしても、決してサイトを止めたり配送を止めることはしない。配送センター内部では何パーセント配送が稼働しているかが常に円グラフで表示されており、それが50%を下回ると激しく警告がでるのは、従業員を病ませる要因のような気がした。

■ストーリー
ブラックフライデーの前夜、世界規模のショッピングサイト「デイリーファスト」から配送された段ボール箱が爆発する事件が発生。デイリーファストの巨大物流倉庫のセンター長に着任したばかりの舟渡エレナは、チームマネージャーの梨本孔と共に、事態の収拾にあたる。犯人の目的と残りの爆弾は?現代社会の生命線を止めずに、連続爆破を止めることができるのか?全ての謎が解き明かされる時、この世界の隠された姿が浮かび上がる。

■感想
関東の巨大な配送センターのセンター長として配属されたエレナ。究極までに効率化されたセンターであり、正社員が9名だけで800人の派遣の業務を回している。すさまじい状況だ。エレナの部下の孔が、巨大配送センターの内情を語る。

デリファストで購入した荷物が配達先で爆発する。爆発物をこれ以上ださないために、配送をすべて止めるのか。それとも全数をエックス線で検査するのか。エレナの決して物流を止めないというすさまじい執念を感じてしまうのだが、それはつまり会社からのプレッシャーということなのだろう。

巨大配送センターの問題は前から言われていた。やはり効率を第一に考えることと、その業務のほとんどを派遣社員にやらせていること。まさに人間をひとつの歯車として扱うことに特化したシステムが作り上げられている。

驚きなのは8800人の派遣社員を管理する正社員は9人しかいないということだ。つまり、それだけの社員でやり切れるようにすべてが自動化されている。それでも強烈なプレッシャーのために心が病む者も続出する。主役であるエレナも例外なく過去に病んだ経験があるというのが強烈だ。

爆発物をどのようにして見つけ出すのか。犯人は誰なのか、というミステリアスな部分よりも、巨大EC企業の構造的な問題が描かれている。特に下請けの配送業者に対してのあたりの強さと、外資系なので成果主義であり日本本社の人間の冷酷非道ぶりがすさまじい。

人が大怪我をしても配送を止めることはしない。何よりも止めないことが重要視されているのが強烈だ。下請け企業が何かしら要求をぶつけたとしても、嫌なら別の業者に依頼する、という一言で終わらせようとしているのがすさまじい。

これをアマプラで見ることができるのが皮肉だ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp