『怪物』 [ 是枝裕和 ]
評価:3.5
■ヒトコト感想
すさまじい作品だ。特に序盤から3分の2まではすさまじい引きの強さと、これからどうなるのかの気になる部分が目白押しだ。序盤は麦野湊の母親目線で物語が語られる。自分の息子がいじめにあっている。教師から暴力をふるわれている。そう思い込んだ早織が学校に乗り込んでいく。
ここでの教師たちの事なかれ主義はすさまじい。無表情でセリフの棒読みのような形となっている。早織のイラつきは観衆にも伝わってくる。この教師たちの態度に対してはむかつきが止まらなくなる。次のパートでは湊の担任教師である保利の目線となる。ここでそれまでの保利のイメージが様変わりする。教師からすると、早織はモンスターペアレントでしかない。この立場が違っての印象の違いはすばらしい。
■ストーリー
大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち。それはよくある子供同士のケンカに見えた。しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した―。
■感想
俳優たちの演技はすばらしい。3分の2までのシナリオはすばらしい。親から見た学校の態度と学校側の事情。教師からすると早織はモンスターペアレントでしかない。この流れはある程度想像できたが、事なかれ主義の権化である校長が、実は孫を駐車場でひき殺しているという衝撃の出来事もある。
保利からすると、いじめられている生徒を助け、いじめているであろう湊に対して注意をしただけ。本当に腕が偶然湊の鼻に当たっただけなのだが、港の証言が保利に殴られたとなると…。
学校目線の物語となると、保利は間違いなく良い教師だ。生徒のことを考え、決して嫌な暴力教師ではない。それでも保利がターゲットとされて暴力教師とされた理由は何なのか。それを紐解くのが最後の子供たちの目線の物語化と思ったのだが…。
そこでは明確に語られなかった。湊と他の生徒たちとの関係。湊はいじめられていたのか、それともいじめていたのか。湊の友達であり、かわいらしい男の子である星川。どっきりだといわれいじめのターゲットとされている星川。この星川が実はすべての黒幕だと勝手に思い込んでいたのだが…。
湊と星川が実は親友であり、いじめられている星川を助けるために湊が暴れたというのはわかる。早織が勘違いした理由もわかるのだが…。なぜ保利が暴力教師であるような告げ口をしたり嘘をついたのか。また、他のクラスメイトも保利を貶めるようなことを言ったり。
このあたりの謎は解明されない。なんとなく子供たちの中で、黒幕がいそうな雰囲気をだしているのだが…。結局は湊ははっきりとした理由もなく保利を追い詰めるような証言をしている。
ラストの子供目線の物語がもう少しはっきりとした謎の解明となっていれば満点だった。