時間移民 


 2026.1.13      遺伝子をプログラミングして人間を改造する 【時間移民】


                     
時間移民 劉慈欣短篇集2 [ 劉慈欣 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
劉慈欣の短編集第2弾。前回の「円」に負けない多種多様な短編となっている。いつもの宇宙をテーマとした壮大すぎる短編もあれば、特殊な技術を得たうえでの戦争物語も印象的だ。地球の科学技術のはるかに上を行く存在に困惑するパターンが多いのだが、それでも宇宙の真理を知ることができれば死んでもよいと考えるのは、いかにも物理学に人生をかけた科学者が考えそうなことだ。

劉慈欣の今の時点での最新と思われる短編である「フィールズ・オブ・ゴールド」は、宇宙船が制御不能になり帰れなくなった人類を救うために科学者たちが四苦八苦する物語だ。宇宙の広大さと、希望をもちながら、最後はそれが意外な形で打ち砕かれる物語となっている。

■ストーリー
環境悪化と人口増加のため、政府はやむなく“時間移民”を決断。全世界に建設された200棟の冷凍倉庫に眠る合計8000万人の移民を率いて、大使は未来へと旅立つ……。表題作「時間移民」のほか、宇宙からやってきた“音楽家”が国連本部前のコンサートに飛び入り参加して太陽を奏でる「歓喜の歌」、『三体』でも活躍した天才物理学者・丁儀がクォーク分割に挑む「ミクロの果て」

すべてを見通しているかのような男に警察が翻弄される銀河賞受賞作「鏡」、太陽系の果てへとひとり漂流する少女を全人類がネット経由で見守る「フィールズ・オブ・ゴールド」など全13篇を収録する、劉慈欣の傑作短篇集。時間移民、思索者、夢の海、歓喜の歌、ミクロの果て、宇宙収縮、朝(あした)に道を聞かば、共存できない二つの祝日、全帯域電波妨害、天使時代、運命、鏡、フィールズ・オブ・ゴールド

■感想
表題作でもある「時間移民」はコールドスリープを扱った物語だ。地球が人口増加に耐えられなくなり、未来であれば何かしら解決されていることを考え8千万人を人工冬眠させた。120年後に一部が目覚めるのだが…。

恐ろしくも想像できないような未来が待っていた。作者は毎回、自分が想像できる範囲を超えた未来を提示してくれるのが良い。120年後にどうなっているのか。そこからさらに冬眠を延長させて千年後にはどうなっているのか。想像外の未来が待っているのが良い。

「宇宙収縮」は非常に短い物語の中に、シンプルな構成で驚きの結末まで到達している。優秀な科学者が宇宙の摂理を解明する。突然気が狂ったように、重要な壺を割り始める。あと数分後に宇宙は膨張から収縮へシフトチェンジする。

宇宙が収縮するとどうなるのか?単純に宇宙の面積が長い時間をかけて縮まっているだけなら数億年後に地球は滅びるだけなのだが…。収縮するというのが時間が戻るという考え方がすさまじい。絶望というよりもどうなるのか。その後のオチがすさまじい。

「天使時代」はプログラムをある程度書いたことがあるので、楽しく読むことができた。人間の遺伝子をプログラミングして変更する。国際社会から見捨てられたアフリカの小国が、自分たちの国民を助けるために人体をリプログラミングする。

衝撃的な人類ができあがるのだが…。アメリカはそれを許さなかった。アフリカの小国がアメリカの空母に攻め込まれる。アメリカの圧勝かと思われたのだが…。人類をリプログラムするという発想は新しいが、必ず別の弊害があるような気がした。

相変わらずのバラエティに富んだ短編集だ。



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