愛しいチグサ [ 島田荘司 ]
評価:2.5
島田荘司おすすめランキング
■ヒトコト感想
島田荘司のミステリー作品。主人公の男は事故により体の大部分を機械化された状態で生き残ることができた。そこから男目線での物語となる。機械の身体となり、男は知らず知らずのうちに自分の視覚がゆがんでいっている。人間が鬼のように見えるというのは、明らかに機械化の影響だが、それを本人が気づくことはない。そんな地獄のような世界の中でチグサだけが美しい顔をしていた。
これは主人公の認識であり、主人公以外からはそうは思われていない。この認知のゆがみが物語のポイントとなる。早い段階で、主人公の視界がゆがんでいることはわかる。そうなるとチグサも普通ではないと想像がついてしまう。勝手に思い込んでいたのは、主人公は心の美しさをそのまな外面としてとらえることができる状態になったのでは?と思った。
■ストーリー
“愛”と“絶望”人が「醜い鬼」になった世界喜びも哀しみも巨匠は掬い上げる機械の目だけに映る”真実の愛”――西暦2091年、謝荷魚は大事故により身体と脳の一部が機械になってしまう。リハビリを終えた彼を待つのは、人々が“醜い鬼”になった世界。絶望する謝は、唯一の人間・チグサと出逢うが――胸を焦がす、落涙の純愛ミステリ。
■感想
近未来の世界の物語。瀕死の重傷を負った主人公は体の大部分を機械化することで生き永らえることができた。ここからは主人公目線の物語となり、主人公の戸惑いと共にチグサとの出会いが描かれている。機械化された主人公の最初の戸惑いは機械によるものとなっている。
そこから、出会う人々の顔が鬼のように見える状況が続く。ただ、それは主人公目線なだけで、他の人々からすると普通の顔に見えている。どれだけ美しい女性でも主人公は鬼のような表情に見える。
チグサと衝撃的な出会いをする。主人公が今まで出会ったことのない美しい女性。ただ、チグサ本人は主人公から美しいと言われて戸惑っている。恐らくだが、チグサは美しいとは程遠い存在なのだろう。よく昔話である、磨けば美しくなるようなタイプでもない。
勝手に想像したのは、主人公はその人の本質を容姿として見ることができると想像していた。なので、心が醜い人は、見た目が鬼のように見えてしまう。それが、チグサの心の美しさが外面の美しさとして表現されているように想像してしまった。
近未来でAIが全盛の世界であり、機械化された主人公の戸惑いが描かれている。チグサの美しさは本物なのか。残酷な結末となるのだが、主人公本人だけが認識が違っており、世界は別の認識でいた。ただ、主人公の認識は、本人がそう思い込めば良いことだと思った。
周りからどう言われようが、主人公自身がチグサを美しいと思っていればそれで良いような気がした。最後に壮大なネタバレがあるのかと思いきや、そうではない。結局は、何が正しいのかわからないままだ。
不思議な雰囲気の物語であることは間違いない。