伊根の龍神 


 2025.9.3      北朝鮮の事情や放射能関連の話まで 【伊根の龍神】


                     
伊根の龍神 [ 島田荘司 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
御手洗潔シリーズの最新作。伊根に龍神がでるということで、興味本位で調査に向かうのは女子大生の麗羅といつもの石岡だ。北欧に行っている御手洗とは序盤で電話で会話するのみ。それ以外はひたすら麗羅と石岡が伊根に行き、現地で様々な人と会い、調査するという感じだ。基本はネッシーのような巨大な龍神がいるのでは?という流れから、現実的な答えを示すという感じだ。

北朝鮮の事情や放射能関連の話まで多種多様な要素が絡み合い、驚きの結末となる。最後の最後まで御手洗は登場せず。潜水艦を龍神に間違えるなんてのは少しやりすぎかもしれない。ミステリアスな展開から、現実に落とし込むまでが少し強引すぎるように感じられた。

■ストーリー
「本当に危険なんだよ石岡君。近寄ってはいけない」龍神が出たという日本海の小さな入り江そこで起きた想像を絶する事件と奥深い闇伊根湾に「龍神」が出たという噂を受けて、石岡は伊根に赴こうとするが、御手洗はなぜか驚いて行かせまいとする。「大怪我するよ」と。その後の大事件と御手洗が伝えた「昏い真実」に震撼する。

■感想
女子大生の麗羅が持ち込んだなぞの龍神の事件。序盤の御手洗と石岡の会話で、御手洗から絶対に伊根には近づかない方が良いという警告があった。これにより、現実的な実験や何かが伊根で行われているのだろうと想像できた。

北朝鮮の国際問題を物語に絡めている。伊根湾で龍神が出た。ネッシーのようなものを想像してしまうのだが…。オチとしては潜水艦を龍神と間違えるという、定番的な流れとなっている。北朝鮮のお家騒動が深くかかわっており、それに巻き込まれる形となる麗羅と石岡だ。

読んでいて勝手に想像してしまうのは、核兵器絡みの実験だった。石岡たちが地元の人々と交流する中で、仲良くなった老人に何かしら秘密があるというのがわかる。長大な物語の4分の1は北朝鮮の工作員の生い立ちというか、生涯の物語となっている。

どのようにして日本に来たのか。そして、日本人を誘拐して洗脳教育をしてきたのか。この流れというのは確かに興味深いが、物語には直接関係はなかった。工作員が伊根に根付いて、そこで活動する。石岡たちは無関係ではあるが、巻き込まれようとしている。

御手洗は最後の最後まで登場することはない。北朝鮮の高官の暗殺事件だとか、潜水艦からの狙撃だとか、あまりに事件は大きくなりすぎている。ストーリー的にはシンプルなのだが、そこに至るまでに周りをかなり綿密に深堀りしているので、かなりのページ数となっている。

ここまで長大にする必要はなかったのでは?と思ってしまう。御手洗のアッと驚くような推理というよりは、情報として御手洗が知っていたというだけで、ミステリー的な面白さは皆無だ。

惰性で続いているような感じのシリーズだ。



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