ほつれとむすぼれ 


 2025.6.11      自分が若者ではないと実感した作者のエッセイ 【ほつれとむすぼれ】


                     
ほつれとむすぼれ【電子書籍】[ 田口ランディ ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
田口ランディのエッセイ集。作者のエッセイはそれなりに読んでいる。いつものパターンに近い。スピリチュアルなエッセイもあり、作者の作品の特徴からか、様々な後援会に呼ばれたり。印象的なのは、心療内科の医者に霊に取りつかれて錯乱していると思われる患者はいるのか?と聞いたくだりだ。

医者が霊障を語るなんてのはダメなのだろうが。。。どう考えても霊のせいだとしか思えないというエピソードを語っている。自分的には霊の存在は信じていない。あるとしたら、人の思い込みというかその人本人がそう思い込むことで起きている現象だと思っている。首が回る夢を見て苦しんでいたところ、先祖の墓にお参りに行ったらお墓に木が倒れていた。そんなのはただの偶然でしかない。

■ストーリー
それでも空は青い…時代の果てにかけそき希望を見出す歯が抜ける夢、労働を拒否して死んだ兄、きぐるみを着た人間たち、顔というマンダラ…世界の断片の中から生きていく意味を取り戻すためのエッセイ集。ほつれとむすぼれ 田口ランディ 生きとし生けるものはつながっている たましいがぎゅうっと抱きしめられるスピリチュアル・エッセイ集 そんなささやかなものは一発の爆弾でこっぱみじんだ。作り上げるのは本当に時間がかかる。それでも・・・・・・と思う。

やはり海はまだ青く、空はまだ青く、光は満ちている。それはほんとに慈悲なのかと疑いたくなるほどにせつない事実。略奪があり、政権争いがあり、暗殺がある。そのようななかでも、静かに暮らす人たちは、ひっそりと窓から顔を出し、壊れた家を直し、ゴミを捨て、食事を作り、家の前をきれいにして、子供の下着を洗うだろう。この地上にはまだ光が満ちている。それがすべてだ。

■感想
兄が引きこもりの末に死亡した経験が強いのだろう。そこから作者はスピリチュアルな流れへと進んでいく。引きこもりについての講演会に参加したエッセイもある。時代によっては引きこもりの定義が変わる。今の時代は働くのが当たり前、働かないのは悪だという時代だかららしい。

確かに時代によっては引きこもりは何の問題もないという時期はあるのだろう。作者の兄の話を赤裸々に語る。幼少期に兄にいじめられ、作者が中学生になると兄は作者におびえ始める。なんだか妙にリアルだ。

作者の初期のエッセイでは酒好きな飲んだくれのエッセイが多い印象にあった。本作でも酒にまつわるエッセイはある。ただ、トーンは弱まっている。友達が障碍者であり、警察の取り締まりにつかまって、その場面での警察とのやりとりのエッセイは最高だ。

警察も相手が障碍者とわかると、とたんに戸惑ってしまうようだ。障碍者は今まで様々な視線にさらされてきた。相手には悪気はないが、障害があることを勝手にハンデと思い込んで普通に生活していることが素晴らしいと周りが言うのは違うという考え方だ。

作者の若いころのエッセイと、本作はだいぶ変わっている。結婚して子供を産んで主婦となっていると考え方も変わる。40代となり自分が若者ではないと自覚する。または歯が抜ける夢のエッセイが複数ある。自分も歯が抜ける夢を見たことは頻繁にあるので、妙な親近感がある。

結局は精神的に不安定な時期に歯が抜ける夢を見るのだろう。作者も小説家として作品を生み出すことに苦労している時期に、歯が抜ける夢を見るそうだ。

相変わらずのトーンのエッセイが多数あるが、時代の変化も感じられる。



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