被爆のマリア 


 2025.7.17      原爆の火をキャンドルサービスに 【被爆のマリア】


                     
被爆のマリア /文藝春秋/田口ランディ(文庫)
評価:3
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■ヒトコト感想
作者はスピリチュアルなエッセイや小説が多い印象であったが、ある時から原爆についてのエッセイや作品が増えてきた。本作もそのパターンの一つなのだろうが。。。印象的なのは「永遠の火」だ。作中で原爆の火が登場してくる。その火を娘のキャンドルサービスの火として使おうと考える父親。実際に原爆の火は存在するらしい。

原爆が投下され広島の街が燃え盛る。その時の火が現在まで存在し続けていることに驚いた。完全に感覚的なものでしかないのだが、この火は原爆で燃えた広島の街の火だといわれ、どのような感情をもつのだろうか。結婚式という晴れの場にはそぐわないように思えてしまう。原爆の火をめぐる娘と父親の攻防が印象的だ。

■ストーリー
もし結婚式のキャンドルサービスに「原爆の火」を使えといわれたら、どうする? 日本の奇妙な「戦後」。「永遠の火」「時の川」「イワガミ」「被爆のマリア」の4編。

■感想
「永遠の火」は印象的だ。結婚式のキャンドルサービスで原爆の火を使いたいと言い出した父親。娘は困惑するのだが…。実際に原爆の火を全国各地に広めた人物がいるらしい。平和の象徴として原爆の火を活用し、原爆の火による結婚式で平和を改めて認識する。

原爆の火のイメージは人それぞれだろう。自分は平和のイメージよりも戦争や原爆のイメージが強く、おめでたい場で使うようなものではないというイメージだった。義理の両親までもが原爆の火を歓迎し始めると、娘の悩む場面が本作のメインなのだろう。

表題作でもある「被爆のマリア」は強烈だ。メインはいじめや虐待を受けている女性の物語だ。その女性が心のよりどころにしているのが長崎にある被爆のマリアだった。まず序盤から人から何かをお願いされると流されてOKしてしまう女性が強烈だ。

同僚から金を無心され、断り切れずにお金を貸す。すると自分が生活できないので消費者金融に借金をする。返済ができずに夜のスナックでバイトをするのだが…。まさに人が落ちぶれていくパターンの典型というような形だ。

スナックのバイトでは客から言い寄られると断り切れずに寝てしまう。そのうちスナックも首になり…。父親が暴力で母親と娘を押さえつけていたタイプというのもあるのだろう。強烈な女性の人生が、様々な出会う人によって変わっていく。

結局救いがない。ビデオ屋でのバイトの同僚が精神科医志望の学生で女のことを分析していたのだが…。実はそれも嘘だった。疲弊したビデオ屋の店長と店の金を持ち逃げしてどこか遠くに行こうとしたり。。。ろくでもない人生だ。

幸せな気分になる短編ではない。



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