【中古】 蛇と月と蛙/田口ランディ【著】
評価:3
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■ヒトコト感想
田口ランディの短編集。作者の実体験をエッセイのように描いているのか?と思うような短編もある。ラストの表題作である「蛇と月と蛙」は一風変わった雰囲気だ。短いエピソードが寄せ集められている。蛇や月や蛙がキーワードになっている。神話のような雰囲気もある。特に蛇が登場してくると、不思議な雰囲気となるのは間違いない。
蛇の化身と美しい姉が関係をもち、それを弟が覗き見る。再現された縄文住居から大量の蛙が湧き出すのは想像すると気持ち悪くなる。交通事故で足を失った男が失意のどん底にあるときに、蛇は足をなくすことで移動を早くすることに成功した。この雑多な感じが良いのかもしれない。強烈なインパクトはないのだが、印象に残る作品だ。
■ストーリー
小学校の遠足で見た3つの影と母の死の予感、鳥インフルエンザ、新月の晩に動き出す味噌の麹、チャーミングなゾウアザラシに求愛された小柄な私、満月の晩にいっせいに産卵する珊瑚……人と動植物と月がからみあう、6つのふしぎな小説集。
■感想
「むしがいる」は印象的だ。時代的には鳥インフルエンザのニュースに騒いでいた時代なので、コロナを経験していると違和感を覚えてしまう。ただ、鳥インフルエンザの騒動が、そのままコロナ渦の騒動にそっくりなのは驚いた。
子供が見えない虫を目にする。それは怒りの虫なのかなんなのか。ストレス社会において、子供が目にするのはストレスに耐え切れず怒りが爆発しそうな人なのかもしれない。都会で鳥インフルエンザが流行ると、親は帰ってくるなという。それはまさにコロナ渦の状況にそっくりだ。
「4ヵ月、3週と2日」の主人公は作者自身ではないか?と思ってしまった。作家としてルーマニアに招かれた主人公。性に奔放な作家として現地でインタビューを受ける。文化と倫理観の違いを描いた物語となっている。
日本に比べてアメリカの方が性に対してオープンなイメージがあったのだが、実際には日本の方が性に対して開放的らしい。細かなニュアンスはわからないが、主人公が現地で経験した状況は、確かに日本人のイメージを変える経験なのかもしれない。
「河童と遭う」は、沖縄で写真家の追悼旅行中、迷信やオカルトを信じない主人公が不思議な体験をする。作家として写真家の過去の栄光を知る。芥川龍之介の河童への共感から始まり、自らの不可解な遭遇を通じて説明できない世界の存在を受け入れる流れとなる。
作家であれば、おなじクリエイティブな職業として写真家に対して共感もあるのだろう。性別が男なので主人公の作家とは別だということがわかるのだが、序盤では、これも作者の実体験では?と思ってしまった。
どうしても作者のエッセイのイメージが強いので、作者の実体験と思ってしまう。