ゲット・アウト [ ダニエル・カルーヤ ]
評価:3
■ヒトコト感想
一瞬、黒人差別を訴えるような社会派な物語かと思ったのだが…。黒人の写真家クリスと白人の資産家の娘のローズ。ふたりは付き合っており、ローズの実家に行くことになったのだが…。ここであからさまな黒人差別があれば物語としてわかりやすいのだが…。必要以上に黒人をリスペクトするローズの家族たち。そして、パーティでも同じような年代の白人たちから丁寧な扱いを受ける。
黒人としての差別がある前提の世の中なので、違和感があるのだろう。かと思うと、ローズの家ではメイドと力仕事を行う黒人の使用人がいる。このちぐはぐな感じと、変に黒人に丁寧な感じの恐怖の裏側が明らかとなる。黒人の強い体は確かに魅力なのだろう。
■ストーリー
ニューヨークに暮らすアフリカ系アメリカ人の写真家クリスは、ある週末に白人の彼女ローズの実家へ招待される。若干の不安とは裏腹に、過剰なまでの歓迎を受けるものの、黒人の使用人がいることに妙な違和感を覚える。その夜、庭を猛スピードで走り去る管理人と窓ガラスに映る自分の姿をじっと見つめる家政婦を目撃し、動揺するクリス。
翌日、亡くなったローズの祖父を讃えるパーティに多くの友人が集まるが、何故か白人ばかりで気が滅入ってしまう。そんななか、どこか古風な黒人の若者を発見し、思わず携帯で撮影すると、フラッシュが焚かれた瞬間、彼は鼻から血を流しながら急に豹変し、「出ていけ! 」と襲い掛かってくる。“何かがおかしい"と感じたクリスは、ローズと一緒に実家から出ようするが・・・。
■感想
ごく普通の黒人と白人のカップル。クリスの友達からは、セレブな白人の家に行ってもろくなことがないと警告されるのだが…。クリスはローズの両親から大歓迎を受ける。そして、煙草を吸うクリスに対して催眠療法での治療をすすめてくるローズの母親。
すべてが奇妙で何かがおかしい。クリスに対する対応は丁寧で別に差別されているわけではない。変に黒人に対するリスペクトがあるために、逆にそれが違和感になっているようだ。黒人をリスペクトしているわりに、使用人として黒人を雇っている。
セレブのパーティには高齢の白人たちが集まり、クリスのことをほめたたえる。唯一の黒人の男もどこかおかしい。結論としては催眠術で昏睡状態にして余命わずかな高齢な白人たちの脳を移植するという恐ろしい手術が行われていた。
脳を移植したとしても、何かをきっかけに元の人格が戻ることがある。恐ろしいのはローズが仕入れ役となり、肉体的に強靭な黒人の若者を連れてきては、オークションにかけて白人に売りつけていたということだ。カップの淵をスプーンでたたくのが催眠のスタートになるのが恐ろしい。
カメラのフラッシュで一瞬だけ元の人格が戻る。実は使用人かと思われていた黒人はローズの祖母と祖父だった。どうなのだろう。確かに肉体的には強いのかもしれないが、白人が若い肉体を手に入れたいからとあえて黒人を選ぶのだろうか。普通に若い白人を選びそうなものだが…。
違和感満載なのは、ローズの屋敷の不可思議さを描くためだろう。何かがおかしいが、その決定的な何かがよくわからないというのはずっと気持ち悪い気分が続く感じだ。
変わったホラー映画だ。