普天を我が手に 第二部 


 2026.7.7      戦争を経験し、そして戦後に希望をもつ 【普天を我が手に 第二部】


                     
普天を我が手に 第二部 [ 奥田 英朗 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
第一部は親世代が活躍し、昭和元年生まれの子供たちは時代に翻弄されている姿が描かれていた。そこから第二部では子供たちが若者へと成長し、それぞれの道を歩み始めている。ただ、誰もが戦争に巻き込まれ死の危険性に直面している。昭和元年生まれというのは青春時代に戦争のど真ん中にいるということで、戦争の理不尽さややるせなさが描かれている。

特に矢野四郎は回天での特攻の直前まで行っているため、死を現実のものとしている。そんな人物が、戦争が終わり新しい時代を切り開く。戦争の苦悩から解放された若者たちのノビノビとした活動もまた本作のメインなのだろう。激動の昭和を若者目線で描いた部分は非常に興味深い部分であり、衝撃的な時代だとわかる。

■ストーリー
太平洋戦争が勃発した。竹田志郎は、父に伴って渡米したが、そこで自分だけ捕虜となってしまう。ようやく帰国した後は日本の捕虜収容所の通訳となるも、目にしたのは看守の虐待が横行するずさんな実態だった。矢野四郎は、父の死後、親譲りの素行の悪さで少年院に入れられる。だが、出院後次第に悪化する戦況をうけ予科練に入ることを決意。戦友と共に人間魚雷「回天」で出撃を期する。

森村ノラは、ひょんなことから亀戸の喫茶店を任されることに。友人と闇米を買いに農村部へいったり、教会で預かった孤児たちを軽井沢へ疎開させるなど、母親譲りの活力で奔走する。五十嵐満は、戦中は映画俳優として活躍。さらに、新国家建設を標榜する張学士らの組織〈リバティ〉に加入。だが、敗戦後に組織はあっけなく瓦解。タップダンスを武器に、旅芸者・藤田と捕まっては脱走を繰り返す。

■感想
四人の若者が戦争と向き合う人生を歩み始める。時代は親世代から子供の世代へと移り変わる。第二部では太平洋戦争開戦から敗戦、そして戦後初期までが描かれている。主役の四人は年齢的に徴兵されることはまだないのだが、矢野四郎だけは予科練に志願し、カミカゼ特攻隊に志願するような状態となっている。

ヤクザ稼業が似合う四郎であっても国のために命をかけることに躊躇はない。右翼的な考え方がそこまで強くは描かれてはいないが、戦争に負けて死に場所を失った際には、自害しようとするほどののめり込み具合はすさまじい。

竹田志郎は父親が軍の幹部であり学生として東京大空襲を経験している。相対的にみると志郎が四人の中で一番恵まれている。母屋は焼けたとしても巨大な洋館は残っている。食べ物に不自由することが多少あったとしても通訳の仕事でアメリカ兵たちに気に入られたりもする。

家族が誰も被害にあっていないというのもある。右翼的な傾向があるわけではないが、志郎としては左翼の傾向があるわけでもない。何かと因縁のある四郎とはあちこちでバチバチやり合うのだが…。それも良い。

森村ノラは女性視点での戦争の苦悩が描かれている。ただ、ノラの逞しさは普通ではないので、その特殊さが印象的だ。自分でチンピラを使って闇のコーヒー豆を手に入れて、喫茶店を開いて繁盛させたり、孤児を引き取り教会で孤児院のようなことをやったり。

あちこちで志郎や四郎と出会ったりもするのだが…。満州へと移住した満だけは少し変わった状況となる。戦争時点では満州で平和に暮らしていたが、敗戦後にソ連に乗り込まれた際に、捕虜として辛く苦しい強制労働を強いられている。

第三部が楽しみな作品だ。



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