普天を我が手に 第一部 


 2026.2.25      激動の昭和の始まりを描く 【普天を我が手に 第一部】


                     
普天を我が手に 第一部 [ 奥田英朗 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
立場の違う四人の人物の群像劇。昭和の始めから戦争突入までが描かれている。このあたりの歴史的事実についてはあまり詳しくないが、非常に興味深く読むことができた。軍人、ヤクザ、社会運動家、大連に渡ったジャズ楽団の主催者。それぞれが激動の昭和を生きている。それぞれの子供世代は第2部以降で活躍するのだろう。

昭和の時代に何が起き、そしてどのような流れで戦争へと突き進んでいくのか。軍人目線、ヤクザ目線、女性の権利を主張する運動家目線、中国へ移住し大連で大成功したエンタメ主催者目線。特に印象的なのは、戦争に最後まで反対し続けてきた軍人目線の物語だ。この四人がまれに交錯することがあり、お互いの子供世代はより濃密に関係することだろう。

■ストーリー
大正15年(昭和元年)12月25日未明、東京・麹町の陸軍少佐・竹田耕三の元に、待望の長男が誕生した。〈志郎〉と名付けられた子供は、日本中が大正天皇崩御の悲しみに暮れる中で、一家の新たな希望となる。同日、北陸・金沢では、矢野一家の親分・矢野辰一が、賭場での諍いの落とし前をつけに、敵対する一家に乗り込んだ。帰宅した辰一を待っていたのは、懇意の社長から預かっていた女工の出産と死だった。

辰一は孤児を〈四郎〉と名付け、自分の手元で養育することに。一方その頃、東京・神保町で進歩的な婦人雑誌「群青」の編集者として働く森村タキが、社会運動家との間に女子を出産。『人形の家』にあやかり〈ノラ〉と名付けたその子を、身勝手な父親から引き離し、女手一つで育てることを決意する。さらに同年の大晦日、野心を胸に中国・大連へわたった五十嵐譲二は、主宰するジャズ楽団の年越しパーティ中に妻から出産の報告を受ける。

出生した男子を〈満〉と名付け、昭和元年最後の夜に最高の演奏をする。昭和100年、戦後80年に生まれる、壮大な昭和史サーガ三部作。第一部は、親世代の視点を中心に、大正天皇の崩御から太平洋戦争開戦までを描く。

■感想
昭和の始まりから戦争突入までがこの第一部で描かれている。激動の時代と言えるのだろう。誰もが新しい昭和という時代に希望をもちながら、戦争へ突き進む世の中を不安に思う。印象的なのは、戦争に反対し続ける軍人だ。

好戦的な若手将校から狙われたりもするのだが、自分の主張を変えることなく、仲間を集め反戦のアピールし続ける。子供が生まれ志郎という名前となり、その後は、ヤクザの息子である四郎とたびたびぶつかることになる。このシロウ同士は今後のライバル関係になるのだろう。

ヤクザ目線の物語も印象深い。最初は金沢の博徒でしかなかった存在が、左翼の組織をつぶしていく中で、いつの間にか右翼のボスのような存在に祭り上げられてしまう。左翼つぶしの関係で、社会運動家の女性の夫の腕を切り落としたりもする。

4人の人物が少しづつ近づいたり離れたりしている。戦争が近づく中で、右翼のボスの座を別の人物に譲りながらも、戦争へ向かう世の中を心配しているヤクザ。ヤクザ稼業は民衆が安定した生活を送れる状態でなければ博打など行うはずがないので、それを何より望んでいるのだろう。

先進的な女性向け雑誌の編集者である森村タキの目線もすさまじいインパクトがある。シングルマザーとなり、内縁の夫が左翼家であり、右翼のヤクザにとらえられ、片腕を切り落とされてしまう。そんな状態で様々な経験を経て再婚し、戦争へ向かう世の中でひたすら女性の権利を主張し続ける。

治安維持法のすさまじさが伝わってくる。特高に監視されながら様々な活動をする。時には実刑がでて牢獄に入れられたりもするのだが…。すさまじいインパクトのある流れだ。

戦争への突入と、その後の騒動が予見できる流れがすさまじい。



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