ドルチェ 


 2026.3.26      アラフォー女性刑事の人情味ある捜査 【ドルチェ】


                     
ドルチェ (光文社文庫) [ 誉田哲也 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
誉田哲也の警察小説。今回の主人公は独身で42歳の女性刑事久江だ。女性の独身刑事でアラフォーという特殊なキャラであり、冴えた推理をするだとか、足で地道に捜査するというようなタイプではない。人情や温かみのある捜査をする。女性独自というか、相手の心情をおもんばかり、真の動機を探ることをメインとしている。

一話完結型の短編となっている。事件関係者の人間関係やその人物のバックグラウンドで何があったのかをメインに調査している。ミステリー的なトリックがあるとか、密室殺人が起きるわけではない。暴行事件だとか交通事故だとか、大事件ではないが関係者にとっては重大な事件の裏側を調査し、真の動機を明らかにするパターンだ。

■ストーリー
誰かの死の謎を解き明かすより、生きている誰かのために捜査をしたい――。練馬署の女性刑事・魚住久江が、古巣の警視庁捜査一課からの誘いを断り続けている理由だ。女子大生が暴漢に襲われ、捜査線上には彼女と関係のあった複数の男性の存在が浮上する。久江が一枚のハンカチから突き止める意外な真相とは(?表題作)未収録短編を加えた決定版!

■感想
「愛したのが百年目」は印象的だ。酒に酔った男が20年来の親友を車で轢いて重症を負わせてしまった。その場に駆けつけた久江は男が酒臭いことを知り飲酒運転での事故だと認識したのだが…。重傷を負った男と負わせた男の関係性を紐解き、男の仕事関係の流れとなり、そこから事故が本当に飲酒運転だったのかがポイントとなる。

意図して事故を起こすことと、飲酒での過失では刑の重みも違うが、何より周りに与える印象が違うのが大きいのだろう。

「袋の金魚」は幼児が溺死した事件を久江が調査する。当初は行方不明となっていた母親が怪しいと考え、事故ではなく事件の可能性を考えていたのだが…。男が絵にかいたようなDV男であり、女がDVを受けていると思われる展開となる。

こうなると読者は男が殺したのか?ということや、女が男に復讐のために幼児に手を出したのかと思いきや…。根本が違っていた。強烈なインパクトがあるわけではないのだが、まっとうな夫婦と思われたふたりには、実は大きな秘密があったことに驚かされる。

「バスストップ」は本編の出来事よりも、久江周辺の刑事たちの関係性が面白い。連続婦女暴行犯を追いかけつづけていた捜査一課の佐久間が久江たちの所轄に入り込んできた。佐久間の横暴な態度と、あえて女を挑発するようにパワハラやセクハラを繰り返す嫌な男。

階級が久江よりも上ということと、捜査一課ということで周りは及び腰なのだが…。そこにやってきた久江の同僚が最高だ。階級よりも何より、どれだけ長い間刑事をやっていたかを重視する武闘派。佐久間が圧倒されているのが良い。

久江のキャラクターが独特なのと、裏に隠された人間関係の妙がポイントの短編集だ。



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